行き先
森の中にある一本道をずっと歩いていく。しばらく歩くその先に大きな大きな壁が見える。遠目からでもその姿ははっきりとわかる。どこまで続くのだろうか。この位置からは終わりが見えないほど続いていた。それはまるで城壁のような造りをしていた。
その壁を見ながら一本道を辿っていくと壁が途切れた入り口がある。しかしそこには人影があった。私達は道から外れて森の中に入る。近くの木に身を潜めながらその壁に近づき、様子を伺う。
どうやら人影の正体は門番のようだ。まるで西洋史に出てくるような甲冑が二体、細長い剣のようなものを持って辺りを観察していた。ただその色は全て白で統一されていた。初めて見るその姿は美しさと同時に、どこか恐怖を覚えさせた。
「ここは無理そうだね。違う道を探そう。」諦めたように言う彼の言葉に頷き、来た道を戻る。その後も帰り道を探すために歩き回るがどこまでも続く一本道と森しかない。一本道は果てしなく続くし、風景が変わることはなかった。
「やっぱりあの壁を越えるしかないのか。」私達は倒れた大木に腰掛け、途方に暮れる。
「そうみたいね。無理そうだけど、、。」あまりの状況に思わず笑い声が漏れた。とても怖くて不安なはずなのに、気持ちが少し軽かった。
「どうすればいいんだ、、、。」隣で頭を抱える姿は今にも呻き声が聞こえそうだ。
「とりあえず、いまわかっていることを整理しましょう。」いま出来ることはこれしかない。やれることをしよう。
「そうだね。そうしよう。」
ガサガサ。草陰から物音がした。二本の真っ白な長い耳が見える。
「なんだ、ウサギか。」そう安心した矢先、それは飛び出してきた。二本足で歩いて。
「うわっ。」
「きゃあっ。」彼と同時に思わず声を上げてしまった。咄嗟に隣にあった服を握りしめる。
ウサギと呼ぶには胴が長く、何よりも二足歩行をする。白い耳以外はシマウマのように縞模様だった。それはあっという間に遠くに消えていった。沈黙が続く。それを破ったのは彼だった。
「とりあえずどこかに行ったみたいだね。あの生き物は何なんだ。」
「わからない。ウサギみたいだけどウサギじゃなかったわ。」彼の方を見て答えると、彼は自分の脇腹をじっと見つめていた。
ハッ。すぐに手を離す。さっき驚いて彼の服を掴んだままだった。
「ごめん。」
「いや、いいんだ。大丈夫だよ。」そう優しく微笑んだ。顔が熱を持つのを自分でもわかった。顔を背ける。
「ロサさん。とにかく一旦状況を整理しないかい。あまりにも謎が多くて僕は頭が追いつかないよ。」頭を掻きながら、照れ臭そうに笑って言う。
「そうね。そうしましょう。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます