降り立つ地
光に包まれた時、私を呼ぶ声がした。右手を強く誰かに掴まれた。
「ここは、どこ。」眩しさが収まり目を開けると緑の森に囲まれていた。温かい風が私を包み込む。振り返ろうと身体をよじると、左側を何かに静止される。
-少年side-
あの時、僕は咄嗟にロサの左腕を掴んでしまった。ここで離しちゃいけないと思ったんだ。掴んだ右腕を誰かに引っ張られる感覚がして目を上げる。
「ここはどこだ。」
周りは木々で囲まれている。森だろうか。少し先には一本の道が通っている。上を見上げると雲一つない青い空が一面に広がっている。
あまりにも急なことに頭は追いつかない。だけど引っ張られた先にはロサさんがいた。それは僕の心を落ち着かせる要因となった。
「ここはどこなの。ってかなんであなたがここにいるのよ。」左腕を掴む僕の手を振り払う。彼女の声は明らかに焦っていた。
「僕にもわからないよ。」わかるわけないんだ。離された右手が空を切る。
「それよりロサさん、体調は大丈夫?。」
何もわからない僕達はぐるりと身体を回転させた。周りには本当に森が広がるだけだ。
パカッパカッパカッ。何がこちらに向かっている音がする。僕達は近くの大木に身を隠した。大木から様子を伺うと黒い蹄のようなものが見えた。足音の正体は馬のようだ。そう安心していると、
「ったく、あいつらも人使いが粗いぜ。いくら足が速いからって隣国に行くには手続きだっているんだから。」顔を見合わせた。
あれは馬じゃない。真っ白な毛並みに尻尾を揺らしている。一見白馬のようだが顔が人間だった。彫りが深いまるで西洋人のような顔つきで、上半身が裸だった。足音が遠く去ってから身体を緊張から解き放つ。
「あれはなに。」ロサさんが僕の腕を掴んで不安そうに尋ねる。
「多分、俗に言うケンタウロスじゃないかな。」僕は冷静に答えた。昔読んだ物語で登場した気がする。
「そっか、ケンタウロスか。っじゃなくて、どういうことかって言ってんの。なんであんたは冷静なのよ。」ロサさんでもノリツッコミすることあるんだ。意外だった。
「ちょっと、なんで黙っているのよ。」
「あ、ごめん。君がこんなに話すとは思ってなくて。」
「、、、。」彼女は気まずそうに口を噤んだ。
「だ、だってしょうがないじゃない。急に光ったと思ったらよくわかんないところにいるし、変な生き物は喋るし。よりによってあんたがここにいるし。」勢いよく言葉を発しながら、彼女の瞳には涙が浮かんできた。
「ごめんね、ロサさん。君を不安にさせるつもりはなかったんだ。」彼女はぐいっと涙を拭い、僕のことをぐっと強く見つめた。
「僕にもここがどこか、なぜここにいるのかはわからない。ケンタウロスは本で読んだことあるから名前を知っているだけなんだ。そう言ってもSFものだから想像上の話だと思うんだけど。」彼女の目をしっかり見て告げる。彼女が少しでも安心できるように。
「そう。私にも何もわからない。光に包まれて気づいたらここにいた。」淡々と答える。
「とにかくここはまた誰か来るかわからないから移動しよう。」僕らは決意し、立ち上がり、辺りを探索した。
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