【完璧執事】異世界からお嬢様が助けを求めてきたので、直ぐに向かいました。
緋色の恋
第1話 ゲームの世界へ転生
トントンとノックの音がする。この音で私は今日もゲームを徹夜していたことに気付いた。
「カレン様、朝でございます。朝食をお持ちしました。」
「クロサキ、まだゲームの途中で手が離せないから食べさせて」
「かしこまりました。」
私の名前は三柴カレン。日本三大財閥の一つ、三柴家の跡取りとして生まれた一人娘の私はとても甘やかされて育てられてきた。その結果、今では自他共に認める立派なゲームオタクに成長を遂げた。
そして、ゲームに夢中になっている私に朝食を食べさせてくれているのは、私の専属執事”クロサキ”だ。私はクロサキのことが大好きだ。大好きで仕方ないから、常に甘える。その結果、ダメ人間に拍車がかかり、私はここまで堕落してしまった。
「カレン様、そろそろ休まれてはいかがですか。今日で三日連続の徹夜になりますが」
「うーん。もうちょっとでクリアだから大丈夫。終わったら休むね。それよりクロサキ、同じ体勢で肩が凝ったみたい。」
「それでは、マッサージを致しましょうか」
「ありがとう、クロサキ」
ゲームに夢中になっているふりをして、クロサキの手の感触を肩全体で堪能する。正直言って、いろんな意味で堪らなく気持ちいい。
ついでにクロサキの匂いも肺が悲鳴をあげるくらい精一杯に体へ取り込む。
「クロサキ、そういえばまたメイドに告白されたんだって?」
「はい。」
私は努めて冷静にクロサキに続きを促す。
「それで、どうしたの?」
「お断りいたしました。私にとってカレン様に仕えるのが一番の幸せですので。恋人は不要なのです。」
クロサキはかなりモテるため、告白の噂を耳にしては毎回こうして聞いているが決まってこのセリフが帰ってくる。私に仕えるのが一番の幸せか…。あ、録音しておけばよかった。
「そっか。あ、もう肩が楽になったから大丈夫」
「かしこまりました。それでは朝食を片づけて参ります」
クロサキの足止めをした真の狙いも果たせたことだし、私はクロサキを解放した。
「そっか。振ったんだ。ふふふ」
私は上機嫌でゲームを進めた。
☆☆☆
4日目の徹夜に突入し、現実とゲームの世界が曖昧になってきたころ、遂にその時は訪れた。
「や、やっと…プリンス・セブンシンズをクリアする時がきた」
エンディングが流れ、今まで攻略してきた乙女ゲーム攻略キャラたちが画面上で私に微笑む。
「うへへ」
つられて私も笑みがこぼれた。おっと、ついでに涎もこぼれてしまった。
エンディングが終わると、今までの疲れがどっとぶり返し、視界がくらむ。
「あ、ヤバい…かも…」
そして、そのまま意識を失った。
☆☆☆
トントンとノックの音がする。いつの間にか私はベッドで寝ていたらしい。きっとクロサキをベッドまで運んでくれたに違いない。
「クリス様、朝でございます。朝食をお持ちしました。」
「クロサキ、ベッドに運んでくれてありがと。ちょっとゲームやり過ぎちゃったね。反省、反省。てへへ」
「クリス様?ゲームとは何のことでしょうか?」
「へ?」
そこで私ははっと目が覚めた。なんだか部屋の様子がおかしい。何この部屋の内装は?私の部屋はこんなにピンクで統一された女の子の部屋って感じでは無かったんだけど…。
見れば見るほど、見覚えのない部屋。
そっか、これはまだ夢だ。だって、私を起こすのはクロサキって決まっているのに、目の前で心配そうに私を見つめる初老のおじさんはクロサキに似ても似つかない。
と、言うわけでもう一回寝ます。
「おやすみー」
「クリス様!何を仰っているのですか!もうすぐ家庭教師が来ますゆえ、早く起きてくださいませ」
ゆさゆさと身体をゆすられる。あれ?おかしいな。感触があるみたい…。嘘だよね?頼むから誰か嘘だと言って頂戴。おぼつかない足取りで、部屋の隅にある鏡の方へ歩き出す。
そこには昨日まで、お世話になったゲームの主人公”クリス”の顔が映り込む。
「私がクリスになったんだ…」
混乱して、部屋を飛び出し廊下を駆け抜ける。途中、全く見覚えのないメイドに挨拶をされるが、返している余裕はなかった。
廊下を駆けている途中、私はずっと何かを握りしめていたのに気づく。
なんとそれはスマホだった。ダメもとで電話を試みる。
電話の相手は勿論決まっている。一回のコールも待たずしてあの男が電話にでた。
「もしもし。カレン様、どうなさいましたか?」
「クロサキ!今すぐ助けに来て!」
「かしこまりました。」
【完璧執事】異世界からお嬢様が助けを求めてきたので、直ぐに向かいました。 緋色の恋 @read_100_book
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