第7話 見つめる者

「肉体の権限を白咲文也に返還。・・・完了。」

と、いう言葉とともに体に先ほどの痛みがじんわりと戻ってきたような感じがした。

「よし、これぐらい離れれば安全だろう。」と、ハイテクスキルさんの声が頭の中に響いた。


「いててッ・・お、おお・・・そうか。ありがとう・・・。」と俺は、お礼の言葉を述べた。


というか、ここどこだ?あのドラゴンから離れられたのは良いんだが・・・出口はどこだ?

そう思いながら俺は、周りを見渡すと。

「ん?」

今、何か?・・・動いたような?

「どうした?」

「いや、今そこの岩陰に誰か・・・にいたような?」

俺は、恐る恐るその岩陰に近づきそっと覗き込むとそこには、誰も居なかった。

「ああ、良かった・・・気のせいだったみたい」

「いや、気のせいじゃないぞ」

「は?え?」

「足元を見てみろ」

と、言われ視線を下に向けると人のような足跡があった。

「足跡・・・?」

「だ、誰のだ?」とハイテクスキルさんに恐る恐る聞いてみる。

「わからん。足跡から靴などは履いていない。ということは、この環境に適応した者だろう。じゃなきゃこんな寒い中で裸足でいられるわけがない。」とハイテクスキルさんが分析していた。


「じゃあ、原住民がさっきジッとこっちを見ていたってことか?」

「そういうことになるな」

そういわれ得体のしれない何かにジッと見られていたと考えるとゾッとする。

「まぁ、今はそんなことは後回しだ。襲ってこなかったてことは敵意は恐らくないってことだ。」と、ハイテクスキルさん。

「まあ、そうかもしれないな」と俺は、誰が見ていたか気になるが今は忘れよう。

「ああ。とりあえず出口を探すぞ。」

「はぁー・・・・、早くこんな不気味なところ出たいぜ・・・」と、俺は深々とため息を吐きながら何故こんな場所から異世界スタートなんだと思いながら足を動かすのだった。


ドラゴンから無事に逃げることに成功した俺達は、この洞窟を出るために出口を求めて歩き回ることにした。


ナビは、ハイテクスキルさんに頼り上っているのか下っているのかわからないままとりあえず足を動かし俺は洞窟の奥に進むのであった。



そして、あたりは静寂に包まれ。


・・・なかった。



ザクザクッ・・・と誰も居なくなったその場にどこからともなく足音が洞窟内に響き渡った。


文也達が完全に洞窟の奥に消え姿が見えなくなったのと同時にソイツの姿は突然現れた。

「・・・・・・」


文也達が、立ち去った後をその深い水色の目をした女性は。


ただただ・・・ジッと今しがたこの場を離れた者を無言で見つめていた。



・・・そして。


ソイツは、ゆっくり足を踏み出しながらその長い水色の髪なびかせながら文也達の後を追うのであった。

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