第6話 ちょっと借りるぜ。

 ブォォォと辺り一面がドラゴンの口から吐き出された冷気により洞窟内は凍り付いた。


そして、俺の体も凍り付いて・・。


いなかった。


「うおわあああ!!・・え?」と、てっきり死んだと思った俺の口から間抜けな声が上がる。


「は?マジかよ」と俺の頭の中の自称ハイテクスキルが驚きの声を上げていた。



周りの壁や岩は凍り付いているのに俺の体は無事だった。

だが、めっちゃ寒くて肌にはジーンと刺す痛みはあるけども。俺の体は凍っていなかった。


「なんか、よくわかんないが俺凄くないか!?」とちょっとはしゃいでいると、

「オイ、今俺の中の情報を漁ってみたがあのドラゴン・・・ヤバいぞ」

「ヤバいとは?」


そう聞いてみると。


「あれは、この世界に存在する七大天災の一角、氷龍だ。」


「七大天災・・?なんだ?それ、詳しく・・」


と、俺の言葉は。


「ッ!避けろ!バカ!!」という頭の中に響いた言葉で遮られた。


そして、ハッとする俺。


ドラゴンが腕を振り上げ俺めがけて振り落とした。

ドーンと洞窟内に響き渡る轟音と凍った地面の残骸が辺りに飛び散った。

そして、「うおわあああああん!!?」と俺は吹き飛ばされた。


俺は、吹き飛ばされる最中。

ドラゴンの体に何かが刺さっているのが見えた。

なんだ?あれ?

「オイ、地面にぶつかるぞ!受け身をとれ!」

「え?!受け身!?どうやって・・ッカア!」

受け身はうまく取れず体に凄まじい衝撃が走った。


い、いてぇ・・畜生、涙が出てきた・・。あと、吐きそう。

そんなことよりはやく起き上がらないとドラゴンが来る・・・!




「オイ、なにのんびり寝てやがるんだ!?お前・・・死ぬのか!?」と頭の中にそんな焦る声が響く。

「五月蠅い!・・・バカが!体が痛くて起き上がれねぇんだよ!あと、死なねーよ!」

「と言うか、どうにかしてくださいませんかね!?お願いしますッ!ハイテクスキルさん!?」と、お願いをしてみる。


ズシン・・・ズシン・・・


と、一歩一歩確実にこっちを目指してドラゴンが向かってくる。


ゆっくり近づいてくるのがまた、怖い。・・・漏らしそう。


「仕方ない、ちょっと借りるぞ?」

「え?何を?」

「お前の体だよ。」

「・・・・・・う?は?」

「はああああいいいいい!?」

「いちいちうるせぇ!」

と、言い放ち。


ハイテクスキルさんは、俺の頭の中でため息をつき。

「この場から少し距離をとる。そして、態勢を整えるぞ。良いな?」

「え?何?体を借りるどういうことだよ!?」

「いいから、死にたくなければ俺の言うとおりにしろ。死にたいなら別だけどな?」


そんな、こと言われたら言う通りにするしかないじゃないか。死にたくないし。


「わかった。頼む」

「ああ、了解だ」

と、頼もしい返事が返ってきた。



「じゃあ、少し借りるぜ?お前の体!」

「ああ、早く安全なところに避難してくれ」

と俺は、ハイテクスキルさんに身を委ねた。


ズシン・・・ズシン・・・と重量感のある足音が洞窟内に響いている。


ドラゴンはもう目の前まで迫っていた。


「一時的に肉体の権限を白咲文也から変更。・・・・確認。」

と、淡々とそんな言葉が俺の頭に響いた。

「よし、ここから離れる!」


と、俺の体は勝手に動き自分でも信じられないスピードで体は動きドラゴンからグングン距離を離していった。


そして、ドラゴンの姿は見えなくなった。


グルルルッ・・・と、ドラゴンの低い唸り声が洞窟内に静かに木霊していた。

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