第5話 遭遇

 俺の視界を奪っていた真っ白い光は、次第に霧が晴れるように消えていった。

そして、突如俺の真後ろから吹いてきたブォォォっという冷たい風に俺の体は、吹き飛ばされた。


おわっ!と驚きの言葉を上げ俺は、地面を転がった。結構転がった。

気分は、おむすびの気分であった。

そして、ゴンッ!となにかにぶつかり俺の体は止まった。


「ああっ!!クソ!痛いわ!!なんだよ!イノのヤツちゃんとした所に召喚しろよ!町とかさ!あー・・てか、ここどこだよ?」と、あらためて周りを見渡してみるとどうやら洞窟のようだった。


「ここが、異世界なのか?なんか実感があまり湧かないな・・・」

「で、・・・・俺は、一体ここから何をしたらいいんだ?情報がないぞ・・。」と俺はその場をうろうろとしながら考えていると、ある事を思い出した。


「あ、そうだ!たしかイノが異世界の情報がわかる魔法をかけてくれたらしいが・・・どうやったらわかるんだ?」


てっきり自動で頭の中に流れ込んでくると思ってた。

まさか、イノのヤツまたうっかりしてその魔法とやらをかけ忘れたんじゃないんだろうな・・・?。だとしたら終わったぞ。俺。死んだ、詰んだ。帰りたい。うわぁーん。


と、思っていると突然頭の中に誰かの声が聞こえた。

「ーーーーーーー!」

「誰だ!?うわ!頭の中に直接ッ!気持ち悪いッ!!」と頭を押さえながら叫ぶ俺。

しばらくすると、また頭の中に誰かの声が響いた。

今度は、鮮明に。

そして、その口調は怒っていた。

「いや!誰が気持ち悪いって!?この野郎!?」と俺の頭の中に女性の声が響いていた。

「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!」と叫ぶ俺。

「ああー!!五月蠅い!黙れ、シャラップ!!!」

「何?誰?何!?・・・・怖いッ!!」

「おい、ちょっと説明するから黙れぇ!!!」


と、謎の声がイライラした口調でそう告げていた。


「・・・・・・・・」と、言われた通り黙る俺。


「よし、黙ったな?まず、俺はイノ様によってお前の中に存在する・・・あー・・・なんて言えばいいんだ?」


いや、知らんがな。


「あれだ!」


どれだ?


「お前の旅をサポートする・・ようするに、だ。

イノ様によって生み出され、お前に寄付された。超凄いハイテクな自我を持ったスキル。それが、俺だ。フハッ!凄いだろ?」

と、きっと顔がもしあればドヤってるんだろうなーと思いつつ話の続きを聞いた。

てか、自分でハイテクって言う?

「イノ様が特別にお前だけに与えたスキルだ。感謝しろよ?俺と、イノ様に。」


感謝・・・、まぁ一人で心細いなー・・・と思っていたのでここは、正直に感謝の言葉を述べた。


「ああ、ありがとう」


「ほぉー、意外に素直だな!素直な奴は好きだぜ!」と、俺の頭の中に言葉が響いた。


「オイ、ところで・・・俺は、何をすればいい?」

「ああ?・・・そうだな。まず、お前は・・・。」


「この場から急いで離れろ。」と、物凄いガチトーンで言われた。


「は?それは、どういう・・・」


そう俺の中からそんな言葉が聞こえた次の瞬間。


ゾクッと俺の背中に突如寒気が襲い。それは・・・俺の体、全体を包んだ。


その正体を探るべき恐る恐る後ろ振り返ると、そこには・・。


いつからそこにいたのだろうか。巨大な白い龍。・・・いや、ドラゴンがこちらをジッと睨み佇んでいた。


その、姿を目視した瞬間・・・俺の心臓がドクンと大きく跳ねた。


そして、そのドラゴンと目があった。

ドラゴンは、俺に向けてその大きな口を開けた口からはキュインキュインと耳障りな音が鳴っていた。


ッ!ヤバいヤバいヤバいと、俺の脳は危険だ、すぐにそこを離れと言っている。

そして、自称ハイテクスキルも「オイ!何してる!?そこからすぐ離れろ!?」と、

俺の頭に五月蠅いほどに声が響き渡る。


そんなのわかってるよ、でも・・・体が動かないんだよ。


そして、ドラゴンの口からブォォォと冷たい風。いや、冷気が俺の体を包み込んだ。



あ、死んだ。・・・・俺。


そして、俺の居た一帯は凍り付いた。







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