第3話「希望」

「で、何か言いたいことある?」


俺は全てを思い出した訳で、優斗が狂気に満ちているように思えて怖かった。


「俺を殺すの……?」


とっさにその言葉が出た。

優斗から出る殺気に勝てないと怖気付いていたのだろう。


「殺す?まさか!そんなことしたら俺が犯罪者になっちゃうよ!犯罪者を殺して犯罪者になるなんてごめんだね!!」

「……ッ!」


「犯罪者」と言われて、反論は出来ない。


「もしかして逃げようとしてる?いいよ、逃げたら。あと10分もしたら動けるようになるだろうし、俺は別に追わないよ。あぁ、そういや、麗奈に会いたい?会わせてあげよっか?」

「何を言って…麗奈は死んで……まさか!」


優斗の狂気に思い出す。

この家に入ってから妙に芳香剤の匂いがキツかった。もしあれが腐乱臭を誤魔化す為だったら??


そういや、麗奈は行方不明だとか言ってた。

点と線が結び付いた気がして怖かった。


「ああああぁ……」


言葉にならない言葉を出した。

動け!体動け!!…その後の記憶は曖昧で気付いたら自宅にいた。怪我はない。返り血を浴びたりもしてない。


つまり大丈夫。

それを確認した途端安心して、眠くなって寝た。久々に安心して寝れた気がした。


* * *


智也が帰った後の優斗の部屋。


「何あれ、ただのビビリじゃん。あんなのの何処がいいの?麗奈」


優斗は麗奈に語りかける。

別に死体に語りかけるサイコパスという訳ではない。そもそも、麗奈はのだから。


「えっ、そこが可愛いんじゃん?私が智也くんの前に現れたらどんな反応するのかなぁ…楽しみ」


人は案外カッターでは死なない。痛いだけで死なない。


優斗は智也を殴って気絶させた後、麗奈の手当てをした。そして智也の処遇を考えて一つの案が浮かぶ。殺人未遂で少年院なんて手ぬるい、もっと苦しめてやろう。そんな一心だった。


それで仕組んだ罠だった。

車に轢かせたことだってその作戦の一つ。



「智也くんは何だかんだ私のこと好きだから、許してくれるよ。また会うのが楽しみだなぁ」


麗奈はそう言って笑った。

智也が安心して寝れなくなるまで後……。

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あの日死ななかった僕へ 一ノ瀬 真琴 @makoto_to

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