That's the daily life, and...
クロエが再び彼女を見かけたのは、初めて会った日の翌日だった。そこで、いきなりの衝撃発言に戸惑って根掘り葉掘り聞いたりしてしまったが、却ってそれがよかったのか、以来彼女の初めての友人としてそれなりに親しくなってきていた。
今日もふらりと市場を歩いていると、彼女が珍しくフードも被らずに何かを探すように露店を覗く姿を見つけて思わず声をかける。
「ユーリ!」
その声に、少女はこちらをゆっくりと振り向く。その表情はどこか憂いを帯びて、何だか確実に艶が増している気がする。周囲の男たちがあからさまに視線を向けるのもやむを得ないほどに。それでも直接声をかけてこないのは、彼女がジェイクの連れだとこの界隈の皆が知っているからだ。
「クロエ」
ユーリは彼女を認めると、ふわりと微笑んだ。知り合いを見つけてほっとしたのだろうか、明らかに気を許したような無防備なその笑みに、周囲の男どもがざわめく。どうしてだかクロエの心臓も跳ねた。
「……心臓に悪いわね」
呟いた彼女に、ユーリは不思議そうに首を傾げる。そうしていると、少し雰囲気が和らいで、年相応に見えた。
「何でもないわ、こっちの話。今日はどうしたの?買い物?」
そう声をかけると、ユーリは考え込むように少し眉根を寄せて、首を傾げた。そんな姿ですら悩ましい。
「何かあった?」
「え……?」
「何だか疲れているっていうか……」
さすがに無駄に色香を振りまいている、とは言えなかった。
「あ……いや、昨夜は少し眠れなくて……」
口籠る様子にピンときた。
「また⁉︎」
「あ……いや……その……」
「ジェイクったら……!」
かれこれ十年以上の付き合いになる船乗りの男は、鋭い灰色の双眸と、その長身と引き締まった体躯で、まあ付き合いの長さの贔屓目を差し引いてもいい男だ。この港町でも秋波を送る女たちは多いし、かくいうクロエだって惹かれていた一人だ。
だが、様々な困難を共に乗り越え、彼はこの目の前の少女を生涯の伴侶に選んだらしい。その証拠に、彼女の左手には彼が贈ったという金の指輪が嵌められている。贈られた本人からその話を聞いたときには、その求婚のムードのなさにはっきり言ってドン引きだったが、とはいえ本人はそれで十分だと言って、幸せそうなのでそれはそれでいいのかもしれない。ただ、散々父親には愚痴っておいたので、当人にもその辺りの機微については伝わっているはずだ。
ともかくも、目の前の少女は、どんな困難もそれを乗り越えるだけの強さを持っているし、性格も話を聞けば聞くほど優しく、そして何より純粋だ。対するジェイクはいい男だが、それこそ彼女より十歳も年上で、女の扱いにも手慣れているはずである。しかし、どうにも心配になって根掘り葉掘り聞き出すと、その心配通り、彼の執着はちょっとどころでなく度を超えている。こんな若い娘を捕まえて、一晩中——それも連日——ことに及ぶなど、大の男がすることではない。
「ちょっと、話をしてくるわ……!」
「いや、クロエ……」
ずかずかとそのまま歩き出したクロエの腕を、ユーリが慌てて掴む。その顔が心底困ったような表情を浮かべていたので、思わずクロエの憤慨も吹き飛んでしまう。
「ユーリはジェイクに甘すぎるわ」
「そんなことはない……と思う……けれど」
しりすぼみに小さくなる声に、一つため息をつく。
苛酷な運命を課せられていたユーリにとっては、まだ世界は狭く、今はジェイクがその大部分を占めているのだろう。クロエから見れば、ユーリは雛のように広い世界を知らず、どちらかというと戸惑っているように見えるのだ。クロエだってこの港町からほとんど出たことがないので偉そうなことは言えないのだが、どうにもこの二人が心配でたまらない。そんな彼女の内心を知ってか知らずか、ユーリはふわりともう一度微笑んだ。
「ありがとう。心配してくれて。でも私は大丈夫だ」
それを見ていた周りの男たちが深いため息をつく。誰だってこんな笑顔を向けられてみたいと願わずにはいられないだろう。
わかってはいるのだ。ユーリは運命に流されるような人間ではない。切り開く強さを持っている。だからこそジェイクは彼女に惹かれたのだろうから。
「わかってるわよ。でも、何かあったら相談してね」
ありがとう、ともう一度微笑んで、それからふと思い出したように口を開く。
「明日からジェイクが一月か二月ほど、船旅に出るらしいから、何か贈ろうと思うのだけれど、何かいいものを知らないか?」
「え? そんなに長く、あなたを置いて?」
思わず大きな声を出しそうになって、慌てて声を潜める。この町で若い女の一人暮らしなど、あまり知れ渡っていい話ではなかった。
「ああ、何だか大事な用事があるんだそうだ。それで、何かお守りでも、と思ったのだけれど」
「そうねえ……ユーリがあげるものなら何でも喜びそうだけど。あ、これなんていいんじゃない?」
ふと目に入ったのは、淡い金の鎖のついた、わずかに緑がかった真昼の海のように透き通った碧い石のペンダントだった——彼女の瞳と同じ色の。
「おう、お嬢ちゃん、お目が高いな。それは南の大陸でしか採れない珍しい石だぜ。たまたまでかい結晶が手に入ったんだが、割れちまってな。その欠片で作ったもんだから、特別に安くしといてやるよ」
露店商が提示したのは、それでもなかなかの金額だった。小遣いで買えるような額ではない。どうしたものかと考え込んだクロエをよそに、ユーリは手持ちの袋を探ると、金の首飾りを取り出した。元々はアミュレットだったらしく、中心に何かを嵌める穴があるが、そこには何もなかった。
「これと交換でどうだろうか。石は……失くしてしまったが、細工はそのままだ」
「へえ……確かに見事なもんだな。いいだろう。持っていきな」
「ところで、この石は夜と昼とで色を変えたりはしない……?」
「ああ、石自体は硬くて珍しいが、それだけだ。特に魔法の力みたいなもんはねえよ」
それを聞くと、ユーリはほっとしたように頷いて、金細工の首飾りを差し出す。露店商はその飾りを受け取ると、ユーリに碧い石のペンダントを手渡した。店を後にしてから、クロエはそっとユーリに囁く。
「あれ、本当によかったの? あれだけの金細工なら、もっと高く売れたかも」
「いいんだ。もともと捨てるつもりだったから」
微笑みながらもその眼に浮かぶ光はどこか厳しい。それ以上はどうしてだか聞いてはいけないような気がして、クロエはただ口をつぐんだのだった。
市場でクロエと別れた後、ユーリはそのままあてどなく港を歩いた。明日にはジェイクは旅立ってしまう。理由を尋ねたが、ジェイクはただ必要だから、としか教えてはくれなかった。今回の船旅は今の船で少し遠くまで行くから、ユーリを連れて行くことはできない、とも。
どちらかというと荒くれ者の多い船乗りたちに、彼女のような人間が交じって長旅をするのが望ましくないことはわかっている。四年前は、まだ彼女が女の匂いが薄い少女であればこそできたことだった。でも、と思う。
気がつけば、ジェイクの船の前に立っていた。明日の出航に向けて、ほぼ準備は済んでしまったのか、人気はなかった。舷梯を渡り、甲板へと上る。
船尾に立つと、潮風が彼女の髪をそよがせた。船縁に腰かけ、ぼんやりそのまま波の音を聞きながら海を眺めていると、空はあっという間にその色を変えていく。寄せては返し、船を揺らすその波は決して留まらない。常に形を変え、すべてを遠くへと運び去ってしまう。
海際の都で生まれたが、これほどまでに海を近くに感じる生活をすることになるとは思いもしなかった。一体自分は何をして生きて行くのだろう、とふと思う。課せられたものは消え、故国もまた帰るべき場所ではなくなった今、彼女が戻るべき場所はどこにもない。
やがて太陽が沈み、夜の帳が降りてもまだ彼女はそこに留まっていた。
「どこへでも連れて行ってくれると言ったのに」
船を静かに月が照らしだした頃、不意にそんな呟きが漏れた。そうして彼女はようやく気づく。
——こんなにも独りになるのは初めてだ。
故国を旅立った時は、常に精霊の気配を感じていた。それに、もともと先のない運命ならばと何も恐れるものはなかった。けれど、今は——。
「船倉にでも、忍び込んでしまおうかな」
「そりゃ困るな。あんたが行方不明になってたら、船出どころじゃねえ」
不意にかけられた声に驚いてバランスを崩す。とっさに腕を掴まれて、逞しい胸に抱き寄せられた。
「夜の海に落ちたら厄介だぞ」
「……あなたが驚かせるから」
「そっちこそ」
「驚かせた? 私が?」
「いつまでも帰ってこないから、探した。クロエに聞いたら昼に別れたっきりだって言うしな」
まったく、と深いため息をつきながらも、耳元に口を寄せ、髪を撫でるその手つきは優しい。
「それは……悪かった。でも、私は一人でも大丈夫だ」
船乗りの恋人を持つ、ということは一人で相手を待つ期間が必ず訪れる。それはわかっていたはずだった。平静に言えたはずの言葉に、だがジェイクが低く笑う気配が伝わってくる。目を向けると、どこか面白がるような、けれど優しい瞳にぶつかった。
「あんたがそれほど俺を必要としてくれてるとはな」
「ジェイク、私は……」
言いかけた言葉は最後まで紡ぐ前に口づけで塞がれる。ゆっくりと、いつもの深いそれではなく、目を閉じたまま啄むように軽く何度も。優しい雨のような口づけが止んだ後、目を開くと間近に灰色の双眸があった。普段はどちらかというと荒々しい印象を受けるその眼差しは、月の光を受けて静かな色を浮かべている。
「俺だってあんたを置いて行きたくなんかないんだがな」
心配でたまらねえ、と表情を緩めて彼女をそっと抱き寄せる。
「乗せていってはくれないのか?」
「俺もそのつもりだったんだが、予定が狂っちまってな」
「……教えてくれないのか?」
少し拗ねたような声に自分でも呆れる。だが、ジェイクはそれさえも愛おしいというように頬を両手で包み、間近に顔を寄せる。
「あんたの願いは全部叶えてやりたいところだが、今回だけは見逃してくれ」
人の悪い笑みは、それでも暖かく、だからこそ本当は信じて待つべきなのだろう。彼のことは信じている。だが、信じられないのは自分自身かもしれない、とその時気づいた。
「あなたがいない間、私は何をしていればいいんだろう」
そう言うと、ジェイクは驚いたように目を丸くする。
「何って……好きなことをしてりゃいいさ」
「好きなこと……」
「あんたが一番楽しかったことは何だ?もしくは、してみたいことは?」
面白そうに尋ねるジェイクに、少し考え込む。子供の頃は本を読むことが楽しかった。だが、それは他に選択肢がなかったからでもある。自由に何でもできるとしたら、いま彼女がしてみたいことは——。
不意に、いい案が浮かんで彼女は思わず微笑んだ。そんな彼女をジェイクが訝しげに見つめる。
「何だか嫌な予感がするんだが、気のせいか?」
「秘密だ」
微笑んだまま首を横に振った彼女に、ジェイクはほんのわずか、獰猛な光を浮かべた眼差しを向けて彼女の腰を引き寄せる。
「そう言われると、何が何でも暴きたくなるな」
あんたの全部を、と耳元で低く囁く声はすでに色濃く情欲を滲ませている。
「クロエに怒られるぞ」
「あんたが嫌がってなければ問題ない」
クロエの名前を出しても動じないところを見ると、すでに彼女はジェイクに事情を伝えてしまっているのだろう。さすがに恥ずかしくなって思わず顔を赤らめた彼女に、ジェイクはむしろ楽しそうにちらりと舌を覗かせる。
「一晩中ってのがまずいなら、今夜は一度だけでいいさ」
明日は早いしな、と言って彼女を抱え上げる。
「ジェイク……⁉︎」
そのまま船室へと運ばれる。窓から差し込む月の光はその表情を窺うにはあまりにか細かった。彼も同じことを考えたのか、彼女を寝台に下ろすと、燭台に火をつける。そうして、昨夜と同じように両手の指を絡められ、視線を向けられるとそれだけで彼女はもう捕えられてしまう。
「さて、始めようか?」
それでも彼女の返答を待つその顔は完全に男のそれで、どうしようもなく体が震えた。答えるまでもなく、体も心も全てが彼を求めている。
答えの代わりに、その意地悪な笑みを浮かべる顔を引き寄せて間近に見つめる。
「明日からしばらく会えないのなら、もっと優しくして欲しい」
それは掛け値のない彼女の本音だったが、ジェイクは胸を衝かれたように目を丸くし、それから今まで見たこともないような切ない表情を浮かべた。
「本当に、あんたって奴は……」
それから、彼は言葉通り、ユーリと包み込むように優しい夜を過ごしたのだった。
しばらく他愛もない話をしているうちに、いつの間にか眠ってしまったらしい。目を覚ますと、ジェイクはまだ寝台にいて、こちらを見つめていた。
「どうかしたか……?」
「あんたの寝顔を見てた。今日からもうしばらく見られないからな」
それから、あーもう耐えられねえ、と彼女を抱き寄せながら、あながち冗談でもなさそうに呟く。その厚い胸板と、力強い腕に抱きしめられ、途方もない幸福感に包まれながら、それでもちらりとその顔を見上げる。長い黒髪の間から覗く灰色の双眸と、その表情は確かに切なげで、その言葉が嘘ではないことを伝えていた。
「だったら、連れていってくれればいいのに」
「そういうわけにもいかねえんだよ」
ため息をつくその様子も、嘘はなさそうだった。
「……わかった。どうか無事で」
船旅は決して安全なだけのものではないから。
「あんたもな」
そう言って軽く口づけるとジェイクは寝台から起き上がる。夜明けはもうすぐそこだった。
身支度を整えていると、陽気な声が聞こえてくる。船員たちがやってきたのだ。船室を出ると、ジェイクが船員たちと話しているところだった。ユーリの姿を認め、皆が目を丸くする。そのうちの若い一人がニヤニヤとジェイクの脇を小突く。
「何だ、結局連れていくことにしたんですか?」
「んなわけあるか」
「ああ、じゃあ別れを惜しんでここで熱い夜を過ごしたと」
ジェイクは軽口を叩く仲間の頭を思い切り拳で殴りつける。
「痛っぇ!」
「無駄口叩いてる暇があったら準備しろ。もうすぐに船を出すぞ」
その言葉に、少し迷ったが、船を下りようと舷梯に近づくと、ジェイクが声をかけてくる。振り向くとすぐそこにその背の高い姿があった。彼はユーリの手を取ると、そのまま舷梯を下りていく。
桟橋の先で彼女に向き直ると、首に下げていた何かを外し、彼女の首にかける。それは、くすんだ銀の鎖の先に黒曜石の飾りのついた首飾りだった。
「俺がいない間、あんたを守ってくれるようにな」
「……あなたの色だ」
灰色と黒の。それでそういえば自分も贈り物があったのだと思い出す。
「ジェイク」
その顔を引き寄せて、碧い石のペンダントを首にかける。それを見て、ジェイクはしばらく目を丸くした後、心の底から嬉しそうに笑う。
「あんたの色だな」
そうして、ユーリの顎をすくい上げると唇を重ねる。何度も、名残を惜しむように。船の上から冷やかすような口笛と囃し立てる声が聞こえたが、ジェイクは気にする風もなかった。唇を離すと、頬を両手で包んで額を合わせる。
「あんたのことはクロエとレンディに頼んである。何かあったら二人に相談しろ。何もなくてもな」
「……わかった」
「変な虫に寄ってこられないようにな」
「あなたこそ」
笑ってこちらから最後に軽く口づけると、それでも名残惜しそうに頬を撫でてから、ジェイクは船へと戻っていく。
そうして、風を帆いっぱいにはらみ、海へと漕ぎ出していくその船の姿が見えなくなるまで、ユーリはただその場で見送っていた。
それから港を後にし、家に戻るとユーリは二通の手紙を書いた。それを子鹿亭の店主に預けると、町を出て、近くの森の中にある丘へと登る。そこは一度ジェイクと来たことがあり、森に囲まれて視界は悪いが美しい泉が湧いている隠れ家のようになっている。そこでのんびりと過ごし、夜を待つ。やがて日が完全に沈み、町の灯も落ち始めた頃、彼女は丘の上で立ち上がり、空に向かってその名を呼んだ。
「……ヴェトリアクラム」
一瞬のうちに、花の香りを含む風が巻き起こり、目の前に闇よりも黒い、大きな姿が現れる。
「呼んだか?」
確かに呼んだ。だが、驚いて声が出ない彼女に、竜が面白そうにこちらを見つめる。
「そなたが呼んだのだろう?」
「……名を呼ぶだけで?」
「本来、名というのはそれほどに重要なものだと、そなたは知っていると思っていたが」
呆れたような響きに恐縮しつつもユーリはそっと近づき、その顔に触れる。竜が笑う気配がした。
「新たな伴侶を求めるか?」
「……え? そういうつもりでは……ええと……?」
「冗談だ」
「竜が冗談を言うとは知りませんでした」
くつくつと笑う気配に、思わずため息をつきながらそう呟くと、竜はやはり面白そうにこちらを見やる。
「では、望みは何だ?」
わずかに青みがかった黒い瞳が真っ直ぐに彼女を見つめる。その瞳は嘘や欺瞞を許さない。だが、同時にすべてを受け入れてくれそうな気がした。だからこそ、彼女はシンプルに自分の望みを口にする。
「——世界を、見たいです」
「船代わりに竜を呼び出すのか」
今にも爆笑しそうな気配に、ユーリは思わず赤面する。そんなつもりではなかったのだが。
「そんなに長い間はここを離れられないので、見て回るならあなたと一緒が一番自由で、安全かと。でも……」
「つまり、そなたの護り手の不在中の無聊を慰めよ、と?」
「ええと、そんなつもりでは」
しどろもどろになった彼女に、だが竜は楽しげに笑う。
「いいだろう、乗るがいい」
「……本当に?」
「どうせすることもない長い生だ。たまには船代わりになるのもよかろう」
本当にそんなつもりではなかったのだが。ともかくも竜は翼を広げて乗るように促してくる。自分で呼び出したのだ、もはや後には引けない。そっとその背にのると、その体は予想外に暖かかった。
「それで、どこへ行きたい?」
尋ねられても特に目的地もない。
「ならば、かつての王国を見せてやろう。レヴァンティアとセフィーリアスが出会った場所だ」
言って、竜は夜空に舞い上がる。
「ついでに、そなたの護り手に挨拶をしていくか?」
「……遠慮しておきます」
ジェイクは彼女にとってかけがえのない人だ。だが、この港町でただ彼の帰りを待つのは、なんだかもったいないような気がしてしまったのだ。課せられていた運命も、帰る場所を失ったことも、すべては彼女の選択だ。ならば、彼女はそれでもその旅を通して得られた全てを楽しむことにする。
竜の背に揺られながら、ユーリはもう一度ジェイクに会った時にその驚く顔を想像して、一人でそっと微笑んだのだった。
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