第38話 エピローグ

 あれから、数週間が過ぎている。

 すでに、日常は何事もなかったように過ぎている。いや、色々とあったことはあったのだが……。

 放課後、光学研究会の部室では、隣の席で恋が必死になって達也に話し掛けているのだ。

「達也君、わたしCM出演が決まったのよ。通信会社の」

「ああっ、知ってるよ。テレビで見たから」

「それでね。けっこう問い合わせがあるようなの。あの後ろで手を振っている女の子は誰だって」

「ふーん。そうなんだ」

「それでね。今度、取材が来るのよ。エイティーンって雑誌で「これからブレイクする女の子」っていう特集でね」

 そういって、雑誌を振り回している。そのエイティーンの雑誌の表紙には、橘愛が写っている。

 あの演劇部の全国大会の後、愛にもスカウトがやって来て、美少女モデルとして恋よりも一足はやくデビューをしているのだ。

「恋さん。嬉しいからってはしゃがないの。達也、困ってるじゃない」

「愛さんは、私が注目を集めているから、気が気じゃないんでしょ」

「そんな訳ないじゃん。私は別に芸能人になりたいわけじゃないし」

「うそ、うそ、達也君の気を引くためにも人気者になりたいのよね」

「ちょっと何よ。だれが達也なんか! 貴方こそ、そうじゃないの」


「悪い、二人とも、ちょっと、その辺、散歩してくる」

 盛り上がっている二人に、そう告げて、達也は、部室を出て行った。


「なによ。未来のアイドル二人を無視して行っちゃうなんて。こんなチャンス、滅多にないんだから」

「なんか、達也、ここ最近、元気ないのよね」

「愛さん。達也君、どうしちゃったの。なんか昔の時々見せていたギラギラ感がなくなっちゃたみたい」

「うーん。きっと、燃え尽き症候群かな? いい素材も手に入らないしね」

「いい素材? 私たち以上の被写体ってこと」

「違うわよ。達也にとって、私以上の被写体なんていないわよ」


 愛は、知っていた。達也の所に持ち込まれた光彩市に降り注いだ隕石の破片は、単結晶の物は少なく、有ったとしても、どれも、熱で変質していて透明度が低く、とても、FGCのためのクリスタルキーには、向いていなかったのだ。

 それで、達也は、実際に隕石で被害に遭った人たちにと、クリスタルを光彩市に寄付していたのだ。


 達也は学校を出て、裏山ののタブレットとクリスタルUSBキーが吹っ飛ばされた荒れ地に来ていた。

「あれから、数週間が過ぎたのか……。まったく、愛はモデルになっちゃうし、恋さんも着実に女優の道を歩き始めているしなあ。ローズ先生も次の民間技術を追いかけているんだろうな~。

 なんで、俺だけ、なんの気力も湧いてこないんだろう。このままじゃダメだって分かっているのに……」


 荒れ地を見ながらため息をつく。

しばらく眺めていると、荒れ地のど真ん中に、小さなクレーターができていることに気が付いた。

 無意識に、達也はクレーターに向かって走り出していた。

 そして、クレーターに飛び込むと、必死で中心部にできた砂山を掘り返す。

 そして、汚れた手には、キラキラと光る透明度の高いクリスタルを掴んでいた。




 達也の顔に生気が蘇る。

「愛、この前の約束、今度こそ果たしてもらうぞ!! それに、恋さんやローズ先生も遠慮なしでいくぞ!!」

 達也が荒れ地の真ん中で天に向かって吠えた。


 ちょうどそのころ、愛の背中には、懐かしい快感と不快感が入り混じった悪寒が走るのだ。

 そして、なぜか、恋やローズにも背中に形容しがたい悪寒が走るのを初めて経験するのだった。





      完

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幼馴染のパンチラショットに執念を燃やしていたら、世界を救ってしまった男の話 天津 虹 @yfa22359

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