第4話 ごこく

~ゴコクエリア~

かばんとボウシの乗ったバイクはかつて、パーク時代に使われていたであろう、街を進んでいた。


「ここが、ゴコクエリア……」

かばんはそう呟くと、目の前に広がる光景を見て唖然とする。


「酷い……」

建物は殆ど崩れ、道も荒れ果てている。

かばんは周りを警戒しながら進む。


「ボウシさん、この辺って……?」

「ああ、昔、ヒトが使っていた施設だな、ヒトの思い入れが強い場所だセルリアンに注意しよう」

ボウシはそう言うと、バイクを一旦止め、双眼鏡を取り出す。

「あの山にさっきの巨大鳥型セルリアンが居る筈だ」

ボウシは山を指差す。

すると、遠くの方から爆発音が聞こえてきた。

「何の音でしょう……」

「何であろうと急いだ方が良いな、行くぞ」

2人は急いで音のした方へ向かう。


――

一方その頃、山の頂上では……。


巨大な鳥型のセルリアンが暴れていた。

セルリアンは周りの木々や地形を薙ぎ倒し、破壊していく。

「探したぜ」男はセルリアンの1部を凄まじいスピードで切り落とす。


セルリアンは悲鳴を上げ、転げ回るがそこに男が何かを撃ち込むとセルリアンの動きが鈍っていく。

「これで少しは大人しくなるだろう」


男はそう言うと切り落とした部位にくっ付いていた発信機を腰にしまう。


「メガネの情報によると、この辺りにある筈だ」

男はそう言いながら鳥型セルリアンの住処と思われる洞窟の中に入っていく。

そして、その最深部の岩に壁画と共に楔が突き刺さっていた。

「これか、例の楔」


男はそれを引っこ抜き、その場から持ち去る。


「ようやくか、」


男はそう呟くとその場を後にした。

ーー


「うわぁああっ!?」

「大丈夫か、かばん!!」

「何とか……」


バイクで走っていた2人だったが、突如セルリアンに襲われ、交代で運転していたかばんは慌ててハンドルを切った。

しかし、木を避けきれず、激突してしまったのだ。


「無事か、かばん」

「はい、でもバイクは一体どこへ……」

かばんは立ち上がり周りを見ると、先程まで乗っていたバイクが横たわっていた。


「山に入ってから道が最悪だ、前来た時はこんなのでは無かったんだが、困ったな」

ボウシはそう呟きながらかばんに近づき、手を差し伸べる。


「大丈夫か?」

「はい、ありがとうございます」

ボウシの手を掴み立ち上がるとかばんはバイクを起こし始める。


「手伝うぞ」

「はい!」

『せーの!』

2人で息を合わせて持ち上げると、そのままバイクは起き上がる。


「良かった、早く向かいましょう!」

「そうだな」


――

「ボウシさん……あれッ!!」

「ああ、見えてる」

そこには巨大な鳥型セルリアンが横たわっていた。


「セルリアンが睡眠を……?」かばんはボウシの横顔を見るが表情からは読み取れない。


「ボウシさん、早くとどめを刺しに行きましょう!」

「待て!かばん!」

ボウシは制止するがかばんは止まらず、ナイフを抜いて駆け出す。その時だった。

巨大な鳥型セルリアンの目が光り出し、鳴き声と共に衝撃波を放つ。


「うぐッ……!」

かばんは吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。

「おい!!しっかりしろ!!」ボウシはかばんに駆け寄るがその瞬間、かばんは立ち上がりナイフを拾い上げ、構え直す。


「まだですッ!」かばんは再び走り出そうとするがボウシが腕を掴む。

「まて!何か構えてるぞ!!」

その瞬間、鳥型セルリアンが羽を飛ばしてくる。かばんは素早く避けるが、避けきれない分はそのまま飛んでくる。

「危ない!」ボウシがかばおうとすると、かばんはその前に立ち塞がり、ボウシを突き飛ばす。


「かばんっ……」

ボウシは体制を立て直そうとするが、鳥型セルリアンの攻撃はまだ終わらなかった。今度は嘴を向けかばんに向かって突っ込んでいく。


「逃げろおおおっ!!!」


ボウシは叫ぶが、既に遅かった。

鳥型セルリアンの嘴がかばんの身体を貫き、血飛沫が舞う。


「かばん……?」ボウシはかばんの名を呼ぶが返事はない。

鳥型セルリアンは満足したのか、飛び去ろうとする。だが次の瞬間、鳥型セルリアンの動きが鈍くなり、バランスを崩して倒れる。

「クソっ!不味いな、一旦逃げるぞ、かばん」

ボウシはかばんを抱え上げると、その場から走り去る。

――

「ん……」


かばんは目を覚ます。

「ここは……」

「気がついたか、止血はしてるが傷が深い無理に動くなよ」

かばんの腰の辺りには応急処置が施されていた。

ボウシはかばんを抱え、走っている。

「ボウシさん、あの鳥型セルリアンはどうなったんですか!?」

「分からない、ただ今は一旦引くぞ」

ボウシはそう言うと、かばんをバイクの後部に乗せる。


「掴まれるか?」「はい、大丈夫です」

かばんがそう答えるとボウシはバイクを走らせ、山を下っていく。


「追って来ませんね」

かばんは後ろを振り向きながら言う。


「ああ、ラッキーだな」

2人はバイクで下山し、橋上の基地まで戻ってくるとそのまま医務室へ向かう。


「しばらくは安静だ」

かばんを医務室のベットに寝かせるとそう言う。


「でも……」

「良いから寝ておけ」

そう言ってボウシは部屋を出て行く。


(結局、誰も助ける事は出来なかった……)


かばんは悔しさを噛み締めながら目を閉じる。

ーー

「ここか……」

男はそう呟くと、建物内に侵入する。そして地下に降りていく。


「やはり、ここに」

そこには先程、男が回収した楔が何かの装置に突き刺さっていた。


「後、ひとつ……」

男は腰につけていたポーチから1枚の写真を取り出しそれを見る。


「また、会えるはずだ」男はそれだけ言いその部屋を後にする。

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けものフレンズ~ジャパリパークの更に続き~ 帽子の男 @BIIGBOUSHI

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