第3話 ぼうし

会議室のような場所に通され、ボウシとかばんは2人きりとなると、ボウシはかばんから受け取った水に存在するサンドスターのサンプルについて説明を聞くと溜息を着く。


「遂に、奴等も水中デビューしたか……」


「はい、これは多分今までで一番厄介な相手になります」


「そうだな、水中での機動性、腐食耐性、それに……」


「それに?」


「恐らく、俺達の知らない技も使うだろうな」


「えっ!?それは一体……」


「この前、俺が行けなかった時に起きたフレンズ型セルリアン大量発生事件、その時に水中でガラスが急に割れたという事を聞いたからな、恐らくそれがセルリアンの技だろう」


「そんな……そんな事聞いてないです、」


かばんは驚きを隠せない表情を見せる


「まぁ、まだ決まった訳じゃない、それにお前も忙しかったから、しょうが無い」


ボウシはかばんの肩に手を置いて話す。


「さて、暗い話は終わりだ、今はかばんの話だ、かばんはどうするつもりなんだ?このまま帰るのか?」


かばんは少し考えて答える。


「あの子がこの近くを通るって聞いたんです……」


かばんは決意を込めた目を向ける


「もう一度、会ってみようって思ったんです、なので、ここに残らせて下さい、探索も手伝います」

ボウシはその目に見覚えがあった。


(……あの時のかばんの目と同じだ)


ボウシは微笑むとかばんに言った。

「分かったよ、しっかり休めよ」

「ありがとうございます!荷物、もっと持ってきます!」

かばんは頭を下げると急いで部屋を出ていった。

「俺は吹っ切れた、次はお前の番だ」

ボウシは静かに呟く。


――

その夜。

「……メガネ聞こえるか?ボウシだ」


『おっ!ボウシ、通信寄越すなんて珍しい、そっちで何か問題が?』


「いや、特には……ある」

『へぇ〜どんな問題だい?』

「それは後で話すが、かばんがジャパリバスに乗ってこっちに来たんだがどういう事だ?」

『?、君が海のサンドスター見たいって言ったんじゃん』

「だからって、こっちまで来ることは無いだろ」

『あれ?君今怪我しててあんまり動けないって、言ってなかった?』

「怪我はしたが、動けないほどでは無いぞ?」

『……?僕の早とちりか、いや何でもないよ、じゃ、僕今新しい検体の復元で忙しいから、じゃあね』「おい!ちょっと待て!」


ボウシが言い終わる前に通信は切れる。

「あいつ、本当に大丈夫なのか?」


ボウシは呆れ顔を浮かべるとベッドの上で横になる。


そして、そのまま眠りについた。

ーー

メガネは通信を切ると、伸びをして、椅子を滑らせ、壊れた培養ポッドの前で止まる。


「……君が、本物だったんだよね?」


メガネはそう呟き、冷めたコーヒーをすすりながら、壁の方をむく。


そこには、様々な地点にバツ印が書かれ、それ同士を線で繋げた地図があった。


「僕も、久しぶりに会いたいな……」

メガネはそうボソッと1人呟いた。


ーー

サンカイエリア、山岳部。


コヨーテの墓の前に1人の男が佇んでいた。


「……コヨーテ」男は膝を着き、墓石に触れる。

「……お前のお陰で俺はここまで来た、これからもお前の為に頑張るよ」

そう言うと男は立ち上がり、その場を後にした。

男の足取りには迷いはなく、まるで自分の目的地を知っているかのように真っ直ぐ歩いていく。


すると男に月夜の光を遮る影が差した。


空を見上げると大きな鳥型のセルリアンがいた。


「間違いない、あれが……」

男はセルリアンを睨みつけると、腰に手を回しナイフと、エアガンを引き抜く。


「悪いな、今日は殺せない」


そう言うと、男はそのセルリアンに何かを投げつけ、どこかへ消える。


――

翌日。

「かばん、準備できたか?」

「はい!もういつでも出発できます」

かばんはリュックを背負い、ボウシの方に向き直った。


「探索はかなりの危険を伴う、俺みたいに怪我を負うかもしれない」

「はい!」

「だがな、訓練を受け積んだお前なら大丈夫、絶対に戻ってくるぞ!」

「勿論です!」


かばんは力強く答えた。

「よし、行くか」

「はい!ボウシさん、行きましょう」


その瞬間、頭上を凄まじい音と共に大きな鳥型のセルリアンが通過してく。

「あの方向、まさか……」

かばんが指を指し、ボウシが見ると、そこはこれから探索に向かうゴコクエリアの島があった。


「ボウシさん、あれって……」

「ああ、不味いことになったな」

「早く行かないと、もし残ってるフレンズさんが居たらッ!」

かばんは走り出そうとするが、ボウシはそれを止める。

「待て、走りたい気持ちは分かるが、コイツに乗った方が早い」

ボウシはかばんにヘルメットを渡す。

かばんはそれを被り、バイクに跨るとボウシの後ろに座った。

ボウシはエンジンをかけるとかばんに言った。


― フレンズさん達を助けるために、今は走るしかない


ボウシがアクセルを踏み込むと、勢いよく走り出した。

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