第2話 おたすけ

『かばん!大丈夫なのですか?』


通信機から聞こえてきたのは博士の声だった


「博士!?」


かばんは通信機を急いで口の近くに持っていき話す。


『そうですかばん、今救助隊がそっちに向かってます、もう少しの辛抱なのです』


そう声が聞こえたと同時にかばんは安堵の気持ちと共に今までのストレスからか、耐え難い睡魔に襲われ、意識が飛んだ。


〜サンカイエリア、何処かの洞穴〜


「うっ…うぅん……」


「お、ようやく起きたか」


何処かで聞いた声が聞こえ、かばんは目を擦りながら、ゆっくりと上半身を起き上げる。


「熱い中、運んで来たんだ、感謝しろよ」


暗闇にうっすらと浮かぶその姿は…


「ツチノコさん!どうしてここに!?」


急に大声を出したかばんに驚きビクッとなるツチノコ


「あんまり大きい声出すな!!見つかるだろうが!」


ツチノコは静かにきつめの口調で言う


「見つかる…?まさか…!セルリアンですか!?」


「だーかーらー!大きい声出すな!!!!」


ツチノコは、ハッとして周囲を見渡すと


「くそっ!もっと面倒くさいもんだ!」


その声と同時に荒野に雄叫びが響き渡る


「まさか……ビースト!?」


「良いから逃げるぞっ!かばん!」


ツチノコが岩陰から首を出して見ていたかばんを手で引っ張り連れ出す。


「ツチノコさんっ!走っても追い付かれます!!」


「良いからこっちこい!!」


かばんとツチノコが目指す先にはバスが停車していた。


「バスのオーバーヒートは直ってる!早く乗るぞ!」


「本当ですか!?じゃあすぐに脱出しましょう!」


バスの目前に来た次の瞬間


ガアアアン!


「グオオオオオオオ!!!」


バスの上にビーストが飛び乗って雄叫びを上げたのだ。


「ああっ!そんなっ!」


次の瞬間


ゴンッ!という鈍い音と共にビーストがよろめいた


一秒もたたないうちに黒い影がビーストに飛びかかりバス上からビーストを叩き下ろした。


「一体誰が…?」


「今は良いから!いくぞ!かばん!」


ツチノコはかばんの手を引きバスに乗せる


「でもっ!あの人がっ!」


かばんはバスから飛び降りて黒い影の人物を追いかけようとする。


「バス内にパークスタッフ確認、付近に高濃度サンドスター検出、緊急発進シマス」


その音声と同時にバスが急発進してかばんはバスの床に叩きつけられてしまう。


「ワッ!?」


急いで立ち上がり、バスの後方の窓から様子を見るが、そこにはあの人影がこちらの方を見つめて居るのが蜃気楼に混ざり、ぼんやり見えた。


「誰……?」


バスはそのまま走り去って行く。


「アイツ凄かったな、かばんお前の知り合いか?」


ツチノコは興味ありげにかばんに聞く

かばんは少し考えてから答える。


「良く見えなかったけど、多分わたしの知り合いではなさそうです、ハンターズにもあんなフレンズは見かけなかった用な……」


「ビーストを制圧出来るようなフレンズがハンターズじゃ無いのか、驚いたな」


ツチノコはそう言うと窓の外を見る


「オレがキョウシュウを出てから6年、もうそろそろ……」


ツチノコは何か言いかけるが、沈黙してしまう


「ツチノコさん?」


「いや、何でもない、かばんそろそろ着くぞ」


その言葉と共に砂丘だらけの視界が開ける。


「うわぁー!海です!」


かばんは嬉しそうに窓ガラスに張り付く


「そして、ボウシが待ってるとこはアソコだな」


ツチノコが指差す先には巨大な吊り橋がある。


「という事は、あの島が……」


「あぁ、ボウシが言ってた"例の島"だな」


「沢山のセルリアンとビーストがあの島に……」


かばんは拳を強く握る。


「絶対に助けてみせます」


―――――――――――――――――――――――

ゴコク大橋


「あ、バスが見えたの!」


シーラが双眼鏡越しにジャパリバスを見つける


「かばんか、何しに来た?」


その瞬間、橋上の基地全体にアラートが鳴り響く


「ボウシ!セルリアンが来たの!」


「チッ、客人を迎える事すらさせねぇ気か、全員持ち場に着いてくれ」


ボウシはそう言うと橋の中域にある巨大なゲートの上に立ち、双眼鏡でセルリアンを確認する。


「数は20かそこらか、まだ何とかなる数か」


ボウシが手をあげるとフレンズ達が水鉄砲を構える


セルリアンがジリジリとゲートに迫ってくる、


「ギリギリまで引き付ける」


中域のゲートの数メートル前にセルリアンが差し掛かった時ボウシは手を振り下ろし、大声で言う。


「撃て!!!」


全てのフレンズ達がその声とほぼ同時に水鉄砲を発射する。


水鉄砲から発射された対セルリアン溶液はセルリアン達を溶かし、石だけにして行く。


それらをボウシとその他腕の立つセルリアンハンター達が砕いていく。


「全員、お疲れ様、終わったぞ」


石を全て砕き終えるとボウシ達はゲートを通って基地内に入る。


「1日に3回は流石のアライさんでも疲れるのだ〜」


「今日はもう休憩しようか〜」


「あ〜疲れた、」


各々フレンズ達が持ち場から離れていくとシーラがボウシの前に飛んでくる。


「はぁ……はぁ……ボウシ、かばんが来たの!」


「お、早いな、すぐ行く」


橋の入口のゲートの前にバスが止まっており、

かばんが休憩中のフレンズ達と談笑していた。


ボウシが近づくとかばんが気付いてボウシに駆け寄る。


「ボウシさん!お久しぶりです!」


「あぁ、また大きくなったな、頼もしいぞ、それでなんの用でわざわざここまで?」


かばんは自身の鞄から海水に入ったサンドスターを取り出し、渡す。


「これが、この前見つかりました」


「なるほど……中で話を聞こう入ってくれ」


ボウシはそう言うとかばんを橋上の基地内に案内した。

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