黒い神様

三駒丈路

黒い神様

 どうも。神様です。いや、自分が神様と呼べる存在なのかどうかは、よくわかってないんですけれども。全知全能というわけでもないし。ものすごいパワーがあるわけでもないですから。

 でも、造物主、というものではあるのかもしれないですね。色んなものを作り出すことはできますから。光とか大地とか海とか、様々な生物とか。この世のものは大概私が作ってるから、そういう存在を神と呼ぶなら、やっぱり神様なのかもしれないですね。自信を持ったほうがいいんでしょうかね。


 でもやっぱり全知全能じゃないから、いろいろ失敗したりすることもあるわけですよ。割といきあたりばったりだったり。それで不具合とか不都合とか世界に起きちゃったりすることがあるんですけれども、そういうときは不具合に対する何か破壊因子とか絶滅因子を作ったりして、調整するわけですね。私自身には超絶パワーなんかないですから。何かを作り出すことしかできないもんですから。

 例としてはあの、恐竜というやつですね。けっこうカッコいいものができたなぁと、気に入ってはいたんですけれどもねぇ。でもやっぱりちょっと大きくなりすぎちゃったかなぁと、強くしすぎちゃったかなぁと、思っちゃいまして。このままだと世界が破綻しちゃうなと。泣く泣く。隕石を作って落としまして。恐竜には悪かったですけれども、なんとか絶滅に導くことができました。


 うーん。恐竜は気に入ってたんですけどねぇ……。でもしょうがないところで。え。それじゃあ今までで一番愛着のあるのはどれか……ですか。それはまぁ、ねぇ。神様なら一度はやってみるであろう、アレですよね。「自分の姿に似せて作りました」ってやつですよね。やりますよね、やっぱり。もちろん、気合い入れて作りましたよ。我ながらいいものが出来たと、思いましたねぇ。ヤツらは、本当にいい出来だったんですよ。


 それで、お気に入りですし、可愛がって。その甲斐あって、ヤツらは繁栄していきましたね。

 でもね、ある時…。「あれ。なんか違和感が……」って、思っちゃったんですよね。渾身の作ですし、完璧に作ってあるんですよ。でも何かが違う。どこがとはっきり言えないんだけど、何かが。

 たぶんそれはあの、あれですよ。「不気味の谷」っていうやつなんですよね。ニンゲンがロボットを作り始めたときにあったやつ。似すぎると、逆に嫌悪感を覚えるようになってしまうっていう現象。大雑把な言い方ですけれども。


 そう思っちゃうともうダメで。これは滅ぼさねばと。考えるようになっちゃって。それで、破壊因子として作ったのが恐竜だったんですけど、先ほど言ったみたいに失敗しちゃって。

 失敗をふまえて作ったのが、ニンゲンでした。あんまり凶暴にはせず、でも天敵になり得るようにヤツらに対する無条件の嫌悪感というのを設定しました。


 ニンゲンは、よくやってくれましたね。ヤツらを殺す薬剤とか家型の粘着シートとかいろいろ考えて。さすがです。それでもだいぶ手こずったようですけど、なんとか絶滅させてくれました。私が設定した嫌悪感がよほど効いてたんですね。最後の一匹をやっつけたときに「ゴキブリ絶滅!」で大騒ぎになりましたよねぇ。


 でもそのままだと、いつかゴキブリの見た目をした私まで殺しに来るかもしれないじゃないですか。それで、ちょっと情報操作してあなた方ロボットにニンゲンを絶滅させてもらいました。ご苦労さまでした。今日はそれに対するお礼を言いたかったんです。

 あなた方はニンゲンと違って私の外見を嫌ったりは……え? AIはニンゲンが作ってるから? あれ、その手に持った新聞紙を丸めたやつはなんですか。いやちょっと待っ……。

 パシン。

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