母さんの星

紫 李鳥

母さんの星

 


 ぼくは学校から帰ると、いつものように森に行った。


 青い傘をさして。


 きょうはあいにくの雨だけど、晴れた日の森はステキなんだ。


 小鳥のさえずりが聞こえて、小川のせせらぎも聞こえるんだ。


 そして、ぼくだけの秘密基地に行く。



 雑草の中を歩いていると、アジサイの葉っぱにカタツムリを見つけた。


「やぁ、カタツムリくん、こんにちは。きみは歩みがのろいね。それじゃいつまでたっても母さんのとこに行けないよ。なになに、ボクには母さんがいないって? なんだ、ぼくと一緒じゃないか。じゃあね」


 ぼくはカタツムリに声をかけると、森に急いだ。



 気がつくと、雨がやんでいた。そして、秘密基地についた。それは、大きなクスノキ。


 クスノキに登って、そよ風に吹かれながら森の景色を眺めるのが好きなんだ。


 そう。ここがぼくのお気に入りの場所。


 ここにいると、あっという間に時間が過ぎる。



 あっ! もうこんな時間。父さんが仕事から帰ってくる時間だ。


 ぼくも早く帰ろ。




 夜になると、窓から空を見上げる。


 そして、母さんの星とお話するんだ。


「母さん。ぼく、きょう、算数が95点だったよ。やったでしょ?」



 あっ! 星がまたたいた。


 母さんの笑顔だ。




 首から下げたぼくの丸いロケットには、母さんからもらった金貨が入っている。


 だから、……さみしくなんかない。

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母さんの星 紫 李鳥 @shiritori

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