16話 ※神様視点
その先のことは、多くを語る必要はない。
人間たちの知る建国神話と同じ。人間たちは試練を受け入れ、神々とともに人と神の住まう国を作り出した。
聖女の仕組みは、神が人に介入をしすぎないため。
神が力を貸さねば土地は成り立たず、しかし介入しすぎては『人間の価値』を見ることにはならないからだ。
彼は神からはなにも受け取らず、人間のすることに口を出さなかった。
人間たちのすべてを受け入れながら、その結果が向かう先をずっと見つめ続けていた。
穢れを浄化しながら、神々と上手く生きていけた時間は、それほど長くはない。
時を経るにつれ、神が引き受ける穢れは増し、人間たちが浄化する穢れは減っていった。
人間たちはいつしか試練を忘れ、神話を過去のものとし、神々の言葉に耳を貸さなくなった。
そうして、ついには偽りの神を作り出したのだ。
それこそが、人間の最大の過ち。本当の神を忘れる、最初の一歩。
『グランヴェリテ』と名付けられた人形の、誕生だった。
あとは転がり落ちていくだけだ。
アドラシオンが必死に駆けまわり、聖女を捜して回ったところで意味はない。
『無能神』の聖女には誰もなりたがらず、『グランヴェリテ』が崇められていく。
人間に同情し、この地に集まった神々も、一柱、二柱と消えていく。
人間を見放し、あるいは穢れを受け止めきれずに去っていき、神殿に残ったのはわずかな神と虚構だけだ。
十分な時間を与えたつもりでいた。
人間が価値を示せずとも、穢れを払い続けるだけで、少なくとも天秤を『維持』することはできたのだ。
放棄したのは人間自身。
華やかな神殿の中央で、人間たちが物言わぬ『グランヴェリテ』の人形に聖女をあてがう傍らで、本当の神は姿すらも失い、忘れられた神殿の片隅で限界を迎えようとしていた。
〇
顛末を騙り終えると、彼はゆっくりと瞬いた。
視線の先には、天上で蠢く『グランヴェリテ』と、彼にあてがわれた聖女がいる。
あれこそは、転がり落ちていく人間たちの最後の分岐点。
偽りの聖女アマルダ・リージュが、力を失ったように、へたりとその場に座り込んだ。
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次回更新は5月になります。
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