7話

 ――とまあ、そういうわけで。


「釈然としないわ!!」


 結局、神様を問い詰めることができないまま、すごすごと撤退したあと。

 私は食堂の片隅で、薄くて香りのないお茶を片手に管を巻いていた。


「私、誤魔化されてるの!? それとも本当に自覚ないの!?」


 美味しくもない紅茶をぐっと飲み干し、勢いよくテーブルに降ろせば、ガチャンと皿に当たる音が響く。

 時刻は夜。夕食時を過ぎた食堂は閑散としていて人気がない。

 静かな食堂で声を上げる私に、遅い夕食を取る少数の客たちが、何事かと驚いたように振り返った。


 しかし、人目なんて気にしてはいられない。

 悶々とした想いを一人で抱えきれず、私はささくれた気持ちで吐き出した。


「まさか、私の考えすぎ!? でも足音は聞こえるし――い、いえ! 思えば実際にお姿を見たわけじゃないわ! もしかして、人と同じ姿をしてないってことも……!?」


 自分で言ったことに、自分で愕然とする。

 たしかに考えてみれば、二本足で歩いたからと言って、必ずしも人の姿とは限らなかった。

 足が二本でも腕が五、六本あるかもしれないし、頭が三つや四つあるかもしれないのだ。


「まさか、それを隠そうとして……!?」


 私の前に姿を見せないのでは!

 これはかなり正解に近い考えでは――と手ごたえを感じつつ頭を挙げれば、こちらを見つめる二つの顔が目に入った。

 テーブルを挟んで正面に座り、無言でじっとり私を見やるのは――ロザリーの取り巻き、もとい、マリとソフィの二人である。


「……相談したいことって、それ?」


 低い声でつぶやいたのは、少し丸くて背の低い方――ソフィである。

 彼女は味の薄さを誤魔化すように、紅茶に多めの砂糖を入れながら、ちらりと隣のマリに目を向けた。


「いきなり『大事な話があるのよ!』って深刻な顔で言うから、なにかと思ったら……」


 とうんざりしたように言ったのは、細くて背が高い方――マリだ。

 彼女は紅茶に手も付けず、頭を一つ振ってからソフィに顔を向ける。


 互いに視線を交わし、少しの間。

 彼女たちは同時に――心底呆れたように、ため息を吐いた。


「死ぬほどどうでもいいわ」

「っていうか、自慢? 自分は神様と一緒にいられるって?」


 容赦のない二人の言葉に、私はぎゅっと眉根を寄せた。

 食堂に、しばし冷たい沈黙が満ちる。


 うーん、これは相談相手の人選ミス。

 やっぱり、素直にリディアーヌに話をすればよかった。

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