44話 ※リディアーヌからの手紙

エレノアへ


 手紙での連絡でごめんなさい。荷物は届いたかしら?

 直接わたくしが出向いて確認すればわかることではあるけれど……今回は、やっぱり手紙から失礼します。


 送ったものについては気にしないでください。

 あまりに物のないクレイル様のお部屋を見ていられなかっただけで、あなたに気を使ったわけではありません。

 どれもそう高価なものではないので、遠慮なく使っていただいて結構です。

 不要なら捨ててもらっても構いません。

 余計なお世話だとしたら……ごめんなさい。

 わたくし、こういうとき、どういうものを送れば喜ぶかわからなくて。

 食べ物なら、あなたが喜ぶのを知っているのだけれど……。


 ……でも、食事の方はもう問題ないものね。

 マリとソフィから、食事をわけてもらえることになったと聞きました。

 それならこれからは、遠く離れたアドラシオン様のお屋敷まで、わざわざ足を運ぶ必要もないでしょう。

 あなたの食生活を聞いて、少しでも手助けになればと思っていたけれど、その役割もこれで終わりました。


 わたくしとしても、もうあなたにからかわれることがないと思うとほっとします。

 あなたってば、いつも余計な一言が多くて、怒っても怒り足りないくらいだもの。

 これでわたくしも、気持ちを落ち着けて過ごすことができます。


 ……。

 …………。


 ……でも、たまに。

 本当にたまになら、あなたの余計な一言を聞くのも悪くないかもしれないわ。

 たまにではなく、もう少し多かったとしても、我慢してあげてもよくってよ。

 あなたといると、騒がしくて仕方ないけど……わたくしの作ったお菓子の感想を聞く相手がいなくなってしまうもの。

 ルフレ様も喜ぶし、アドラシオン様も、わたくしが誰かといると嬉しそうにされるから、……ええ、その、だから。


 ……だから。


 用事がなくても、会いに来ても構わないわ。

 強制するのではなくて、あなたの好きな時にでも。

 それがどういう関係かくらい、わたくしもわかっています。


 あなたには好き勝手言われたけれど、わたくしだって黙ってはいられません。

 ええ、わたくし、作れないんじゃなくて作らないだけだもの。

 だから――わたくし、生まれて初めてこの言葉を伝えるわ。

 光栄に思いなさい。いえ、嫌なら断ってもいいけれど。

 ……でも、できれば断らないでほしいの。


 エレノア・クラディール。

 エレノア。


 ……わたくしの友達に、なってくれませんか?

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