第5回のセリフでほのぼのラブコメは不可能だってばよ。

 私はテンプレ転生悪役令嬢!

 細かいことは省くけど、とにかく皇太子は公爵令嬢の私より身分の低いヒロインと結婚するために私との婚約を破棄するの。その前になんとか私から婚約破棄しないと色々罪を着せられて死ぬ!

 優位に破棄するためには、皇太子の弱みを握るっきゃない。そのためにどうすればいいのか信頼出来る執事に相談すると、


「では忍者を呼びましょう」


 と言ってきた! 忍者いるんだこの世界! バリバリヨーロッパファンタジーなんだけど!




「嬉野から来た忍者です」

「嘘だッ!!!!!!」



 思わず目を見開いて私は叫んだ。


 なんでそこで嬉野が出てくる!? しかも嬉野忍者村あるけど(※1)『佐賀に忍者なんていない』って誰か言ってた記憶あるよ!!


「おや? ご存知ありませんか? 2018年に3人の忍者の名前が判明したのですよ」

「ちょ……この物語の時間軸どうなってるの?」


 私としては近代国家が始まるより前の話だと思ってたんだけど? ってかなんでそこまで嬉野に詳しいの? 悪役令嬢の中の人である嬉野出身の私より詳しくない???


「というか、姿が見えないけれど……」

「そりゃ忍者ですから」

「主にも見せてくれないの!?」


 じゃあどうやって話せばいいのさ! と思ったら、天井裏から、


(※2)「我は姿無き影ゆえに、名乗るべき名など無い」


 という声が。

 ……いつの間にそこにいたんだ。プライバシー的な意味で心配になってくる。





 しかし忍者はとても優秀で、ついでに尺も少ないせいか、どんどん皇太子の情報が集まってくる。

 ヒロインと二人きりの逢瀬。捏造した私の罪の証拠。

 別に裁判で勝てるとは思わない。とりあえず濡れ衣着せられて婚約破棄されて死刑なんかにされる未来を回避したい。

 そこで私は、まずはヒロインを揺さぶることにした。

 証拠を次々突きつけると彼女は、はい、と答えた。


「あなたは王子妃になりたいの?」


 そう尋ねると、いえ、とヒロインは首を振る。


「信じて貰えないかもしれないでしょうけど、私、本来はこんな姿じゃないんです」


 その言葉に、私ははっとした。

 まさか私と同じ、ヒロインも転生者?


 そしてヒロインは、覚悟を決めたように驚くべき言葉を発した!





「私! 実は月から来たんです!!!」






 ……。


「……かぐや姫?」

「? いえ、普通に移住して……そしたら突然何故か地球に……私は三世なので地球が今どんな風になってるか分からなくて、しばらく困惑してて気づいたらこんなことに」

「そう来たかー!!!!!!」


 多分それ未来の月! あれだ、ガン〇ム的なSF世界観から来た人! 

 転生者が令和の世界からやって来るなんていつから錯覚していた? って言ってる場合じゃない!


 私は一先ずヒロインもとい月からの転生者にかくかくしかじかと説明した。

 彼女は目をまん丸してこう答える。


「信じられません……」

「そうだろうね、過去というか物語の世界に転生したなんて」

「そんな簡単に殺したり生き返らせるなんて、命に対する冒涜では!?」

「え、そっち!? い、いやまあ言いたいことはわかるけど(※3)それを言っちゃぁ、おしまいよ。ねっ」


 どうやら彼女の世界では科学の発展に伴って倫理が厳しいようだ。楽しんで読んでいた私としては耳が痛い。

 失礼しました、と咳払いをひとつして、月からの転生者は言った。


「とりあえず、このまま進んでしまっては悪役令嬢さまは死刑に、私は王子妃になってしまうということですね?」

「うん、まあそう」

「でしたら、こういうのはどうでしょう」


 月からの転生者はニッコリと告げた。












「貴様ー!!! 私に、こんなことをしていいと思っているのかぁー!」


 お縄になった皇太子が、私に向かって叫ぶ。

 現在王宮にて、軍のクーデターなう。首謀者は私と月からの転生者。


 私は遠い目をして彼女の言葉を思い出した。



『悪役令嬢さまが、女王になっちゃえばいいんです!』


 アルカイックスマイルでとんでもない策をぶちまけてきたよ。

 いや御先祖は確かに王家の血を引いた人だけど、私は公爵令嬢だよ? と言ったら、彼女はエカテリーナ二世の話を持ち出てきた。


 なんでもエカテリーナ二世、外国からロシアの皇太子の元に嫁いだ人だったにも関わらず、皇太子を蹴落として女王となったらしい。


『おまけにエカテリーナと違って悪役令嬢さまはちゃんと王家の血も引いています。そして、王さまと王妃さまの覚えもめでたいです。自分の都合で冤罪作って身分の低い女を囲い込むだけしか能のない皇太子なんて誰も希望を持てません』


 やだこの子めっちゃ辛辣。その通りだけど。

 まあそんな感じで、忍者が集めた情報が功をなし、色々上手くいったのだ。その色々は説明すると長いから巻きで行くぞ! べ、別に作者が考えられないとかそういうわけじゃないんだからね!!


「往生際が悪いですな」


 忍者の声が聴こえた。

 かと思いきや、天井から彼が姿を表す。


 それは、信頼出来る私の執事だった!

 って正体お前かよ!!


「申し訳ございません、お嬢様。一人二役を演じているのを悟られぬよう、腹話術を使って天井から聴こえるようにしていました」

「あなた多芸ね!?」


 もう色々情報ありすぎてついていけないんですけど!


「して、どのように致しますか」

「うーん……どうしようかなぁ」

「(※4)佐賀には葉隠という武士道ならありますよ。どうでしょう?」

「あなたのその佐賀推しはなんなの?」


 武士道と云ふは死ぬ事と見つけたりってか。いーよ殺さなくて。重くても幽閉までにしとこうよ。

 忍者もとい執事の言葉に、黙れ! と元皇太子。


「武士道なんぞ、(※5)メキシコ帰りのお前に何がわかる? いい加減なこと抜かすんじゃない!」


 そう叫びながら、彼は軍人にしょっぴかれていった。


 ……いやもうさー、情報量多すぎだって。

 どこから来たのよメキシコ。そんな描写ひとつも無かったじゃん。というかなんであなたが知ってるんだ。

 ともかく、執事、恐ろしい人!!!



 


 まあそんな感じで色々あって、結局私はそのまま女王になることになって。

 忍者だったり執事だったり佐賀だったりメキシコだったりする人は宰相となり。

 ヒロインだったり月からの転生者だったりする人は私の正室となった。



「……って、え。私ら女同士」

「なんですか私の事お嫌いなんですか! もしも私の求愛を拒むのなら(※6)あなたを殺して私も死ぬわ!」

「いややめて!?」


 皇太子に関する死亡フラグは折れても、今度はヤンデレヒロインの死亡フラグが立ってしまった。

 まあそんな感じで、色々ありましたが、無事みんな生きて幸せになりましたとさ。めでたしめでたし。







「大丈夫です! 私の故郷の発明品を使えば、一時的に男性になれますから! 世継ぎ問題は解決します!」

「そしてここでくるSF要素ぉ!」


 ……うん。

 設定に対して、字数が足りないわ。

 



※1……無月兄さま『佐賀に忍者なんていない』

※2……祟さま「我は姿無き影ゆえに、名乗るべき名など無い」

※3……関川 二尋さま「それを言っちゃぁ、おしまいよ。」

※4……野林緑里さま「佐賀には葉隠という武士道ならありますよ。」

※5……八番出口さま「メキシコ帰りのお前に何がわかる?」

※6……無月弟さま「あなたを殺して私も死ぬわ!」


近況ノートはこちら!

【終了!】第5回!フォロワーさまが残す一文を使って物語を書きたい【お腹空いたー!】

https://kakuyomu.jp/users/misora2222/news/1177354054918668068


ご参加ありがとうございました!

なんかもうやっつけ仕事でゴメンなさーい!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る