第4回は頑張ってラブコメを絡ませた(背景)
私の名前は
しかし。
『……今日の気温は42度。あまりの暑さに街の人からは、
(街の人A)《いやー、あんまりな(※1)暑さのなか、セミの声が消えたほどっすよ》
(街の人B)《もう暑いです! 死にそう!》
という声が。熱中症対策はしっかり行いましょう』
ビルにつけられた巨大テレビ。
その中に映るアナウンサーが、酷く真面目な顔で放送する。
……私はなぜ、こんな日に
いやしかし、実行は今日この日しか有り得ない。
(※2)「あれ? 今日は花火大会じゃなかったっけ?」
そう。
スクランブル交差点で通り過ぎた男が言った通り、今日は都でも一番大きな花火大会がある。
ターゲットはそれを見に、毎年所定の場所を訪れるのだ。
その向こう側に位置するビルから、射撃する。
花火の爆音の中、銃声が聴こえても誰も気づくまい。
ところが。
「あ、それ? 中止になったよ」
男に寄り添って歩いていた女が、そう言った。
「流石にこの暑い中で花火はねー。人がごったがえすし、いくら救急車あっても足りなくなっちゃうって」
「だよなー」
笑いながら去る男女。
……地面を見ると、影の上にポタポタと汗が落ちている。
ーー取り敢えず。脱ぐか、黒タイツ。
トイレの個室でようやく黒タイツを脱ぎ着替える。
ふう、涼しい。
さ、早くクーラーの効いた喫茶店で一休みしよう。こんな日もあるさ。どんなことが起きても、すぐに立て直すのがプロの殺し屋……。
「ね、お願いよ! 一生に1度でいいから、(※3)壁ドンされたい!」
女の声がトイレの外から聞こえた。
そのセリフがあまりにも場違いだったため、私はうっかりすっ転んだ。
なんだ場所も場所だがそんなことやりたがる奴がリアルにいるのか!?
私は慌ててトイレから出た。もちろん殺し屋としてちゃんと気配を消して、外の様子を確認する。
壁まで追い込んで、女を覆うようにいる男。
男は女を見下ろすように、壁に両手両足をめり込ませせてドンとしてい……。
「いやそれ蝉ドンだよ!!!!!!」
私はつっこんだ。自分が殺し屋であることを忘れて。
しかも公共施設だぞここ! 壁にひび割れてますけど!?
良いのかあれ、全く別物の、色恋とかじゃなくてもはやイロモノーーあ、顔を赤くして男を見上げてる。いいんだなそれで!? 本当に!?
ーー取り敢えず、見なかったことにしよう。
性癖は、色々だ。公衆トイレの前でして欲しくなかったけど……。
トイレから出て、ひとまず近くの喫茶店に入る。
すると、なんと入口にはペッ〇ーくんがいた!
『いらっしゃいませー』
私は感動した。なんてことだ、私がペッ〇ーくんに声をかけられる日が来るなんて!
今まで友達と一緒に声をかけても、なぜか私だけスルーされ続けたというのに!
『お名前をご記入ください』
そう言って、胸元のタッチパネルを私に見せてくるペッ〇ーくん。
なるほど、ケータイ会社が契約するサインをタブレットで書かせるのとおなじだな、と思い、手渡されたタッチペンでサインする。
ウキウキウォッチングな私に、ペッ〇ーくんはこう言った。
『うわー。(※4)ついに、ご自分のお名前を書けるようになりましたね!』
……誰だこの人工知能に教育したのは。
「ねー、ケンちゃん。私の事、どれくらい好き?」
(※5)「大好きですよ、とても。たぶん、君が思っているよりもずっと」
「やだもー! こんなところで恥ずかしいー!」
なんだ今日は厄日か。
一つだけ空いていた席の隣には、なんとまたもやカップルが。
花火大会中止のお知らせカップルに、公衆トイレの目の前で蝉ドンプレイをするカップルの次は、人目をはばからないバカップルか。……おまけにペッ〇ーくんからは思いっきりバカにされるし。
はぁ。名前ぐらいかけるよ、ペッ〇ーくん……。
「ご注文は何にされますか?」
「あ、じゃあ……この、隠し味カレーで」
ここの喫茶店は、カレーが一番有名なんだそうだ。隠し味を入れているらしいが、それは日替わりで変わるらしく、その隠し味を当てられたら、カレーはタダにしてくれるらしい。
私の舌は的確だ。何せ、あらゆる毒薬・薬草を口に含んでは何かを当てる訓練をさせられていたのだから。バカップルと同じものを食べるなんて中々ハードル高いけど、今日はもう散々だ。少しでもいいから達成感を味わいたい。
「お待たせしましたー」
暫くして、美味しそうな香りを漂わせたカレーがやって来る。
横を見ると、お隣のバカップルにもカレーが運ばれていた。……デートでカレー食べるってなかなかすごいな。
ふむ……この、アーモンドのかおり。
ピーナッツバターでも入れているのかな?
そう思いながらスプーンですくい一口。
「うっ!」
私の口と舌に、電流が走ったような痺れが襲う。
(※6)隠しても、隠しきれない隠し味。
これは……。
「青酸カリじゃねぇぇぇかぁぁぁぁ!!!」
思いっきり私は叫んだ。
ペロっ、これは青酸カリ……じゃねーよ! 未だに殺人事件で青酸カリ使う奴がいたのかよ壁ドンレベルでありえへんわ! あんまりにも苦すぎて口からリバースしたし、カレーだからゲロ吐いたみたいに見られてるじゃねぇか!
と思いつつも、冷静な私は誰か逃亡していないか辺りを見渡した。
すると、出入口に今にも逃げ出そうとしている
「待てこらぁ!」
すぐさま私は、その
「い゛、痛い痛い!」
「お前、なんっで私に毒を盛った! 私は(今日は何も)恨まれるようなことをしてねぇぞ!」
「あ、あんたじゃねぇ! 毒を盛りたかったのは、アイツなんだ!」
……アイツ?
つまり
加えてわたしは毒物に強かったため、誰も死なずにすんだ。……殺し屋的にはどうなんだとも思うが、まあ金にならない仕事はしないからな、私は。
しかし私の地獄はここから。
後日、警察署から感謝状が送られたのだ。
私のライフはゼロになった。
今回参加してくださったフォロワーさま
※1……アメリッシュさま「暑さのなか、セミの声が消えた」
※2……物語る人さま「あれ? 今日は花火大会じゃなかったっけ?」
※3……無月兄さま「壁ドンされたい!」
※4……祟さま「ついに、ご自分のお名前を書けるようになりましたね!」
※5……無月弟さま「大好きですよ、とても。たぶん、君が思っているよりもずっと」
※6……関川 二尋さま 隠しても、隠しきれない隠し味(地の文制限)
近況ノートはこちら!
【終了!早すぎ!?】第4回! フォロワーさんが残す一文を使って物語を書きたい【無茶ぶり? 大歓迎じゃぁぁぁ!】
https://kakuyomu.jp/users/misora2222/news/1177354054918291197
フォロワーさま、ありがとうございました!
頑張ってラブコメ絡ませましたよ!!!(棒読み)
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