第3回目は大分迷走した。引くほど汚れたギャグの登場だ。

 ゴウウ……と激しく風が鳴る。

 目の前には、崖の上に立つ、魔王の城。

 いくつものSAGAを乗り越えて、いま、勇者一行の最後の戦いが幕を開けようとしていた!


「この長い旅で、俺たちも変わっちまったな……いいんだか、悪いんだか……」


 勇者がふ、とニヒルに笑った。

 すると、そばに居た僧侶が笑う。


「(※1)『昔の君も格好よかったけど、ワタシは今の君の方が好きだよ』」


 ドキ、とした勇者に、僧侶は慈愛の笑みを浮かべたまま続けた。


「ーーと、(よく利用する)食堂のおばちゃんが申しておりました」

「おばちゃんかよー! ありがたいけど、おばちゃんかよー!!!」

「こらぁ! 魔王の城なのよ、気を抜かない! 全く……少しは変わってよね! こっちはいっつも負担かけられてんだから!」

「まあまあ、魔法使い殿。ようやくここまで来れたのです」


 プリプリと怒る魔法使いに、戦士がどうどう、と落ち着かせる。

 仲間の顔ぶれを見て、勇者は言った。


「ようし、それじゃあ行くぞ! 魔王の城へ!」







 魔王の一撃が、勇者たちを焼き尽くす。

 骨も、灰も残らない。

 勇者、僧侶、魔法使い、戦士は消し飛んだ。

 残る者は、ただ一人だけ。


 魔王の間で、魔王の高笑いが響く。


「フハハハハ! 弱い、弱すぎるぞ! 虫けらかと思ったぞ!? 残るは貴様だけだ!」


 たった一人、生き残ってしまったその者は、泣き叫ぶわけでもなく、ただ魔王を見据えた。


「なんだ、どうしたぁ? 恐ろしくて泣くことも出来んかぁ? 安心しろ、貴様はじっくり殺してやr」


 下卑た笑みを浮かべ、見下ろしてくる魔王に。

 生き残った者は、怯えることも無く、ただこう言った。





「ーー『コンテニュー』」

 チャリーン。


 勇者、僧侶、魔法使い、戦士のHPが回復した!

 勇者、僧侶、魔法使い、戦士のチャージが溜まった! 全員必殺技を放つことが出来る!


 勇者は剣を振り、僧侶は数ターンの体力と魔力の回復を、魔法使いは勇者にあらゆるバフと魔王にはえげつないデバフをつけた! 戦士は特に何もしなかった!


「な……課金プレイコンテニューだとぉ!?」


 へ、と復活した勇者は笑った。


「俺たちはなぁ……仲間の『金持ち』のおかげで、ここまで来たんだ!」勇者 レベル15 

「いや弱すぎぃ!? どんだけ金をドブに捨てたんだお前ぇぇぇ!!! ちったあ努力しろぉぉぉ!」


「うふふ……勇者さま、必殺技だけは、ボス戦に通用しますものね。最初に死んでおけば、復活する際、即☆必殺技を放てますから」僧侶 レベル15

「捨て身にも程があるだろぉぉぉ! もっと大局を見据えて戦略を立てろぉぉぉ!」


「全く!!! 弱すぎるアンタらの必殺技のために、あたしがどんだけスキルで魔力を回したか覚えてる!? 過労死させられるかと思ったわよ!!!」魔法使い レベル100

「あ、優秀な人ほど酷使される典型的なブラック企業だー! なんでお前そんな最低なパーティーに来ちゃったの!!!」

「フレンドで呼び出されたに決まってるでしょーが!」


「最早金持ち殿の資金力がなければ、最初の町ですら動けませんでしたなぁ。世の中金です」戦士 レベル10

「どぉーりでお前ら冒険者にしちゃ随分羽振りいい格好してるよ!!! ここに来た時『え、ディスコに行こうとして迷い込んじゃったんかな?』って思ったもん!!! あと肌ツルツルだな!」

「食堂のおばちゃんも、最早大衆食堂のレベルじゃねーモン食わせてくれるもん。一回の支払いにウン十万円とか、昔の俺には考えられねーよ」


 誰も彼も変わっちまったよ、経済概念がな。

 遠い目で語る勇者。


 余裕で体力の三分の二を残す魔王、勇者たちにつっこんでいる間にチャージを貯める!

 魔王の必殺技に、またもや勇者たちが灰燼となる!


 が、またもや金持ちは『コンテニュー』を唱えた! 復活する勇者たち!

 その流れが4度目となった時、いよいよ魔王の体力も底につきかけていた!




「『コンテ……」

「ちょ、ちょっと待て! (※2)ホトケの顔も三度まで、って言葉知らないのか? 流石に金でビンタするような倒し方は勇者的にどーよ!?」

「魔王……」


 ふ、と金持ちが笑った。


「(※3)おいは、がばい好いとるばい。お金」金持ち 財力レベル♾️

「これだから資本主義はぁぁぁ!!! つーかなんで佐賀弁!?」


 封建主義かつお金のない魔王は叫んだ。


「こうなったら、俺も召喚課金してやる! いでよーー」

「国庫の貯蔵は充分か?」

「うるへーブルジョワ! ーーいでよ! サタン!」


 魔王のなけなしの財産召喚により、魔王の間に描かれた巨大な魔法陣から登場したのは。






「(※4)俺がサンタクロースだ……」

「サタンじゃなくてサンタァァァ!」





 赤い服と白い髭を蓄えた、やけにダンディーなサンタクロースだった。


「俺はサンタクロース。……しかし最近の子は、物をプレゼントするより現金の方が喜ばれる」

「サンタクロース、何言ってんの!?」


 そういうわけで受け取れ、主よ。

 そう言って、サンタが魔王に手渡したのはーー



 大隈重信の顔が写った紙幣。


(※5)『大隈重信、テメーコノヤロー!』 


 あまりの衝撃に、魔王の声が二重になった!


「大隈重信一度も紙幣になったことねーじゃねぇぇかぁぁ!」

「おっといかん、それは未来の紙幣だった。許せ。なあに、……年後には使われるようになる、それまで大切に保管していろ」

「世の中キャッシュレスになりつつあるんですけどッッッ!? せめ、おま、Pay⚪ayでーー」


 魔王のツッコミも虚しく、サンタクロースは魔法陣に吸い込まれて消えていく。願いを叶えたからだろう。


 魔王は、呆然と立ちつくし、やがて膝を着いた。




「(※6)ドラマでよくやるやつ、一度やってみたかったんだ」


 いつの間にか課金コンテニューで復活していた勇者は、ぽん、と肩を叩いた。


「罪をつぐなって、またやり直すんだ。お前なら、やり直せる」



 勇者の言葉に、魔王は、一昔前の、


『同情するなら金をくれ』という言葉を思い出したのだった。



          完!


今回参加してくださったフォロワーさま

※1……無月弟さま『昔の君も格好よかったけど、ワタシは今の君の方が好きだよ』

※2……関川 二尋さま「ホトケの顔も三度まで、って言葉知らないのか?」

※3……野林緑里さま「おいは、がばい好いとるばい」

※4……八番出口さま「俺がサンタクロースだ……」

※5……無月兄さま『大隈重信、テメーコノヤロー!』

※6……祟さま「ドラマでよくやるやつ、一度やってみたかったんだ」



近況ノートはこちら!

【終了!】第3回! フォロワーさんが残す一文を使って物語を書きたい【懲りずにまたやるよ!】

https://kakuyomu.jp/users/misora2222/news/1177354054917936867

フォロワーさま、ありがとうございました!

汚れっちまったギャグの悲しみに!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る