第5話 願い

  ふと、友達付き合いのためだけに行った、ファミレスの後ろの席になった女子高生2人組が言っていたことを思い出す。

「女子は群れていないと自然と浮き始めるよ」

この時の僕は男子だって同じだわ。と思っていたが改めて考え直すとやはり女子の方がめんどくさいと思う。

 男子にもグループ的なのはあるが他のグループと話せるのは上位グループの人だけと決まっている女子とは違い基本的に誰に話しかけても浮くなんてことは無い。ある程度誰かと話してさえいればボッチだなんて思われない。その点女子は一人でトイレに行っただけでボッチと言われてしまう始末だ。

 男子は恋愛に関してはさほど考える必要がない。第一に男子はなんだかんだで割り切れる生物だ。


 女子は誰かに告白する時に周りの女子に言う。「応援してくれる?」なんて言って「手を出すな」と警告する言葉を。もしそんな中、誰かが手を出さなくても、その彼と少し仲良くするだけでその人はハブかれていく。


 まず、確かめなくちゃいけない。東条が紗川に本当に惚れているのか。彼女は性格はまだしも外見だけなら他を圧倒するものを持っている。一目ぼれしていてもおかしくない。明日確かめるべきはそこだ。東条を彼女に接触することを防ぎながらいかに情報を集めるかだ。

 などと考えながら、一心の一日は終わっていった。



 学校に着くと既に孤島の席に彼女は座っていた。

 「紗川さんおはよう」

と学校での仮面をつけながら彼女に話しかける。すると彼女も飾った笑顔を浮かべながら挨拶を返してくる。そんな飾った笑顔だと知っていても彼女の笑顔の破壊力はとんでもないものだった。


 一心は雪乃に小声で第二図書室に来てもらうよう声を掛け、教室から出ていく。

 第二図書室に着き彼女をカウンターの椅子に腰かけて待っているとすぐに彼女がやって来た。

「あらあら、こんなとこに呼び出して何する気?」

雪乃はいたずらっぽい笑顔を浮かべ、色っぽい声で喋りかける。

「なら、帰るな」

とだけ言い出口に向かって歩き始め雪乃の横を通り過ぎようとすると、雪乃は突然泣き出しそうな声で必死に謝る。


 こいつの扱い方がだんだん分かってきた。

 一心は、大きなため息をつき話し始める。

「告白するならどの時間がいいと思う?」

「昼休みか放課後でしょ」

彼女はさも当然のように言ってくる。

「たしかにそうだが、今日に限ってはそうじゃないと思う」

なぜなら今日はまだ四時間授業だからだ。当然のように昼休みはない。

 そのことに気が付いたのか彼女は彼女はうれしそうな表情を浮かべ僕を見てくる。

「放課後に仕掛けてくるのね」

「おそらくな」

 なぜこの二択になるかと言えばまだかかわりの少ない転校生の連絡先を手に入れるのは難しく、学生がゆっくり話をできる時間は限られている。だから必然的にゆっくり話せる昼休みか放課後になるという訳だ。

「今日だけなら、言い訳でもつけて逃げ出せるだろ」

「そうね。ありがと。」

と彼女はまた色っぽい声で言うと図書室を出ていった。

 この時は、2人ともは 何事もなく今日が過ぎていくと思っていた。そんな思いはすぐに浅はかだったと思い知らされることも知らずに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕は今日も仮面をつける 西条塔夜 @sakurashino

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ