【140字小説】泡沫の国

王子

泡沫の国

 一時帰国した父が異国で買ってきた缶バッチに、見知らぬ島国が描かれていた。

 不思議なことに、ここには時間が流れる。昼は瑠璃るりの海、夕方はだいだいこぼした空、夜は白くともる星。

 ある日、鈍色にびいろを残して島国が消えた。単身赴任先で内戦が始まり、父が帰国したのと同時期に。

 泡沫うたかたの国は今、ひきだしの奥で眠る。

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【140字小説】泡沫の国 王子 @affe

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