主人公の「僕」が出会った、クラスメイトの女子。
病気のためなかなか学校へ来られない彼女のために、「僕」は勇気を出して小さな一歩を踏み出した。
かけがえのないその一歩一歩が、少しずつ、子供たちの小さな世界を広げていく――
小学生の「僕」が初めて知った世界、大人になった「僕」が知っている世界。
それは決して優しいだけでもなく、温かいだけでもない。
ひとつひとつを胸に刻みながら、「僕」は少しずつ大人になっていく。
屈託のない少年の感情、純粋な感動だけでは終わらない、少し苦みの残るラスト。
美しさだけではない現実感が、かえって胸を打ちます。
心に残る短編です。