第2話
ギャンブル、摂取したら一時的に気分が高揚するやつ、この国では規制されているのはそこまで多くない。いや、ダメとは言われているが実際には黙認されている。町のあちこちでケンカもあるが衛兵は積極的に関与してこようとはしない。助けを求めれば別なのだが、おそらく面倒に思っているんだろう。
そしてなんでこんなに自由なのかは明白だ。この国では唯一厳しく制限されているものがある。お菓子だ。
ここでは一般人がお菓子を持つのは制限されている。持って良いのは国が認めた人間だけだ。このままではこの国は従来のエネルギーが枯渇する、だから代替エネルギーとしてお菓子による画期的な効率の良いエネルギー
だが、巷では噂している。正確には違うだろうと、本当は国の偉い奴らがお菓子を独占しようとしているんだと。そのために国はお菓子を制限されたストレスを他の分野で発散できるように規制を緩和したんだと。
◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇
僕はつい先日、ちょっとした仕事を請け負った。といっても、誰からも頼まれたわけではないが。
とある貴族に対して予告状のような手紙が届いたらしい。ここの家主の娘の命を奪いに来ると言うものだった。その予告状に記された日はその人の家でパーティーを行う予定だった。そのため、相当大胆かもしくは目立ちたがりな野郎に違いないと思われた。
その・・・名前は忘れてしまったが、その貴族はただのイタズラか嫌がらせだろうと思いつつも、念のため臨時でより多くの警備を雇おうと求人を出した。それを見た僕は早速その仕事を引き受けることにした。こうして僕は、その日限りの臨時で少し田舎に近い貴族の家の警備をすることになったのだ。
そしてパーティー当日の夕方、僕は予告状が出された貴族の家へと向かった。
集合する場所は家の敷地内ではなく、そこから少しだか離れた場所に設営されたテントだった。
「まあ、急いで寄せ集めたやつらを敷地内に入れるわけないか」
僕が野営地に着くと、統一感のない風貌の4人の放浪者らしき男達が何かを待っていた。4人それぞれが散り散りに点在していて、全員他人だっていうことが一目でわかる。僕もその一員に加わって待つことにした。
貴族の家は今僕たちがいる場所より人1人分弱くらい高い位置にあり、そこも人1人分ほどの塀で囲まれている。しかも家の2階には広いバルコニーがある。あそこからなら周辺の畑や果樹園、そしてそこで働いている人が一望できるだろう。この国の貴族は人を見下ろすのがよっぽど好きなようだ。
そんなことを考えていると、小綺麗な鎧を着けた男が2人やってきた。
「たった5人か、まあ多すぎても困るからちょうどいい」
そんな不満なのか安堵なのかよくわからない感想を述べると、兵士は僕たちを一点に集めた。
「集まってもらって感謝する。もう知っていると思うが、今回の仕事の内容はここの警備だ。今晩、ここでは社交界が行われるのだが何者かがここを襲うという予告状を出してきた。君たちには一晩家の周囲を見張ってもらう」
そう説明すると今度は僕らの荷物検査が始まった。
「む、これはなんだ?」
兵士が放浪者の男の背中にかけられたものを指差す。
「これは石弓だ。俺は普段狩りをしているから、もし誰かきたら遠くからでも狙えるぜ」
男は自慢げに話すが、兵士は首を振る。
「ダメだダメだ、危険すぎる。貴族の人たちに当たったらどうするんだ」
男は抵抗したが、最終的任務が終わるまで兵士が預かることになった。
支給する余裕が無いから各自で武器を持ってこいと言っておきながら、危険だと判断された武器は取り上げるみたいだ。恐らく、この中に犯人がいる可能性も考えているのだろう。
他のやつらも遠くから狙えるような武器は全て没収され、剣や斧や鈍器だけが残った。
そして僕の番となり、持ってきた袋から短剣とロープを取り出した。
「短剣にロープか、おいどうする?」
早速目を光らせた兵士たちは話し合いを始める。
しかし僕はこれだけしか持ってきていないため、これを取られたら丸腰だ。
「すみません、僕これしかないんです」
僕は必死に訴えた。すると、どうやら僕の想いが届いたようだ。
「こいつはパーティーが行われる庭の反対側につかせよう。俺もその辺りを巡回する」
荷物検査が終わると、兵士は僕たち放浪者にお金が入った袋を渡してきた。
「これが前金だ。そして犯人を捕まえた者にはさらに報酬を与えよう」
その言葉に放浪者たちはざわめき、僕以外はやる気が出たようだった。
こうしてそれぞれ屋敷の周辺の配置につき、仕事が始まった。
お菓子の禁止された世界で @nan18
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