黄鬼の美龍徳玄

黄鬼族の美龍は軍人だった。

美龍は今の黄鬼国の現状に不満を持っていた。

というのも黄鬼国の建国の理念と現状が合致していなかったからだ、黄鬼国はもともとトヤマ国と同じく君主制国家だったが所謂、きび団子戦争によってトヤマ国の植民地となり皇帝は廃位された。

きび団子戦争とはかつてトヤマ国と黄鬼国との間に起きた戦争である。

もともとトヤマ国と黄鬼国は貿易をおこなっていた、黄鬼国は歴史ある国でお茶の文化が発展していた。トヤマ国では黄鬼国のお茶の文化が受け入れられ、お茶とその陶磁器の需要が高く、トヤマ国からは銀を、黄鬼国からはお茶や陶磁器をそれぞれ輸出していた、だがその当時のトヤマ国の皇帝、トヤマ安家はこのままではトヤマ国から銀がなくなってしまうことを憂慮して銀の代わりになるものを輸出したいと思っていた。

当時、トヤマ国は産業革命により安い綿製品を大量に生産することができこれを輸出したいと思っていたが、黄鬼国は自国の綿産業を守りたかった為、綿製品の輸入には消極的だった。

そこで、トヤマ国は植民地のイヌ国に綿製品を買わせ、植民地のイヌ国に作らせていた、きび団子を黄鬼国に買っていただく、つまり

トヤマ国は黄鬼国から100万円分のお茶やその陶磁器を輸入する

イヌ国はトヤマ国から100万円分の綿製品を輸入させる。

黄鬼国はイヌ国から100万円分のきび団子を輸入する。

三角貿易を実施した。

その結果、イヌ国の綿産業は破壊され、黄鬼国にはきび団子が手に入るようになった。

だがこのきび団子が問題であった。

きび団子は食べると美味しく一時的に気分が高揚するが、副作用として、一定時間たつと不安、焦燥、幻覚、妄想、けいれん発作、脱力感に襲われる。

また、きび団子の作用に体が慣れてしまい、高揚を得るための必要な量が増えていき、使用量がどんどん増えていき結果的にきび団子のためならなんでもする機械人形が生まれた、サル族、イヌ族、キジ族が、きび団子一つで自身より数倍体格差のある赤鬼族に命を落とすかもしれない戦いを挑んだのは彼らが勇敢だからではなく、きび団子により理性を失ない桃太郎の指示を盲目的に従う機械人形だったからである。

その結果、赤鬼族は非戦闘員である老人、女、子供まで大量虐殺された。ただ殺されるだけの者は幸せな部類で、狂戦士として理性のたがが外れたサル族、イヌ族、キジ族、黄鬼族達は欲望をみたすため父親の目の前で娘を強姦した後、殺害したり、金歯や銀歯、指輪、イヤリング、ネックレスなど金目のものを持っているものは、それぞれ顎のない死体、指のない死体、耳のない死体、首のない死体になることになった。


国内できび団子中毒患者が増えた黄鬼国は、黄鬼政府はきび団子の輸入を停止した、イヌ国はきび団子を売れず、トヤマ国から買わされる綿製品の代金を支払うことができず国内に大量の餓死者を出した、黄鬼国民はきび団子を輸入しない黄鬼政府を糾弾し、トヤマ国はイヌ国の貿易の自由を守る為、そして、きび団子を求める黄鬼国民を救う為、正義の戦争を起こすこととなった。

その結果は火を見るより明らかだった。

黄鬼政府はトヤマ国だけではなくイヌ国そして国内のきび団子を欲する国民とも戦わなくてはならなくなったからである。

黄鬼国もイヌ国、サル国、キジ国と同じく植民地の一つになった。


後に鬼ヶ島の戦いで戦勝国の一因となり独立を回復するとき

黄鬼国植民地代表、東毛沢はどういう国作りをするか考えた、かつての黄鬼国は皇帝とその血縁の貴族たちが富を独占し、自分たちの利益を得る為に国民に輸入品であるきび団子を食べさせた、富の偏りが国崩壊を導いたので富をみんなで分ける国にしようと考えたのである。

持つものと持たざるものの差を無くそうと考えたのである。

その結果、持つものから奪い、持たざる者に与える強大な力を持つ国家が出来上がった。また二度と他国に支配されないように強大な軍事力を持った国しようと

国民全員に兵役の義務が課せられた。

結果的に東毛沢やその幹部が高所得な国民から集めた金を奪い、僅かな金を低所得国民に再分配するという、かつて皇帝とその貴族たちの地位にいたものが東毛沢やその幹部達に置き換わっただけで以前と変わらないどころか、以前の国家体制より国家首脳部の富とただの国民の富の格差が開く結果となった。国民は皆等しく貧しくなったのであった。


美龍も貧しい家庭の生まれその日その日を生きていくのが精一杯であった、母は美龍が生まれてすぐ過労死して、姉が母親がわりに美龍を育ててくれていた、美龍はそんな姉が大好きであった、貧しくはあるが姉への愛で心は満たされていた。

だがそんなある日、姉は家からいなくなった、姉がいなくなった代わりに毎日、お腹いっぱいご飯が食べられるようになり、働きに出るはずだった美龍も学校にいくことが許されたそれは将来の国家首脳部へ仲間入りを意味していた。

父親に尋ねたら指導者、東毛沢の妾の一人として仕えることになったらしい、美龍は頭では、父親に姉が指導者の妾になる申し出を断る権利が実質的にはないことを知っていた。断ったら父親は死体となった上で姉は指導者の妾となっていただろうからだ、だが10代の姉が父親より年齢が上の50代の男の性のはけ口となること許した父のことを感情的には美龍は許せなかった。


美龍は自分から愛しい姉を奪った指導者東毛沢、東毛沢が作った形だけ平等な黄鬼国が許せなかった。自分の愛する姉を取り戻すべく、美龍は次期指導者に相応しい武勲をあげる為、第一段階として、戦後の鬼ヶ島を黄鬼国領とすべく鬼ヶ島そしてその背後にいる桃国と戦う準備を始めるのであった。

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続桃太郎、鬼ヶ島の戦後統治 @884403k

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