075話 衝突!総力戦!~参

アイリーンは宙に浮き、《アルテミス》の速射砲を、アースとヒュウガに、浴びせていた。

巻き上がる砂塵に、アースとヒュウガが呑み込まれる。


アイリーンは、止まらない。


砂塵を見つめつつ、サッと《アルテミス》を手放すと、両手を掲げ、叫ぶ。

風神降臨ふうじんこうりん!!」


アイリーンを中心に風が渦を巻く。

渦は大きくなり、高くなり、速くなる。

そして、あっという間に、渦は竜巻となった。


アイリーンを囲った竜巻は、アース、ヒュウガを覆っていた砂塵を吹き飛ばした。

姿があらわになったアースとヒュウガは、目の前の竜巻には、無反応だ。


ただただ、歩を進める。

一歩、また一歩と、アイリーンに向かって。


アースとヒュウガは、淡い白い光に身を包まれたまま、高速回転する真空の刃となった竜巻の壁の中へと、姿を消して行った。

アイリーンの変身は、間に合うだろうか……。



"ドゴォーーン!"

あちらでは、赤い着物が地を滑り、山肌に衝突していた。

カイハーンは、振り切った右拳を戻しながら、天に吠えていた。


突如として山肌から飛び出た、赤い軌跡。


それにカイハーンは反応したのだろう……。


カイハーンも青い軌跡に姿を変えた。


そうして、赤い軌跡と、青い軌跡は、ぶつかり弾け、またぶつかる……。


"カン!キンキンッ!カキン……"


二つの軌跡はこの戦場に、ぶつかり合う金属音だけを、もたらしている。



地上の様子をみていた私の耳に、再びマリーの声が届いた。

「はぁはぁ……いい加減に、離れなさい!」


マリーが身体をくねらせ、私の熱烈ハグから、逃れようと、再び、もがき出す。


「ふふふ、絶対、離さないわよ~!マリー」

私は、マリーを背後から抱き締めている。

もちろん、そんな趣味など、ないのだけど。


私は予測を確信に変えるため、マリーとお話しをする。

まぁ、これが解ったところで、どうしたものかという感じなので、時間稼ぎ……というやつなのですが。

「マリー……貴女あなたが使う魔法の中に、貴女あなた自身を回復したり、補助したりする魔法は、無いんでしょ?」

「何を言っているのですか?……ぐ、離れなさい!」


私はムギュっと抱き締める腕に、力を込める。

「……そうねぇ、下手したら貴女あなた、仲間を回復、補助する魔法も使えないんじゃないの?」

「ふふ、私はダークエルフ……仲間など要りません。下等種族を仲間として代用すれば良いだけです。それに私は回復魔法など、覚えなくても良いのです!」


マリーの顔に、プライドからか笑みがこぼれた。

「私の魔法の前に、敵は居ません。回復?補助?……ふふ、それは、弱い種族が行うこと。私は高貴なるダークエルフ!小汚ない人間やエルフ族などを焼き払うのに、なぜ回復が必要でしょうか?」


「そう!だから、絶対に離すわけにはいかないの」

「……え?」

貴女あなた、自分に向かって魔法……使えないんでしょ?使ったこと無いでしょ?」

「……」

「前の世界でも、今も、あの落雷の魔法……貴女あなたの周りだけ、落雷がなかったわ……」

「……」

貴女あなたは、貴女あなたに向かって魔法を放てない!」

「……それが、だから、どうしたというのですか」

「ふふ、当たったようねぇ。だけどそうねぇ。だから、どうしましょうか……って問題よね、これ?」





生死を掛けた激戦が繰り広げられる地上。

そんななか、

私達はそらで、熱烈ハグハグ。

しているだけであった。

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MIKOs 浦上 とも @ura0912

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