074話 衝突!総力戦!~弐

「じゃ、あとは頑張るのじゃ!どっちが生き残っても……ワシは楽しいぞ!」


白い着物を着た、白髪の少女は、それだけ言うと、頭を左右に揺らしニコニコと笑いながら、スーっと天高く消えていった。


唖然と、それを見上げていた私達三人は、紫色の輝きを合図に、一斉に疾走する。


天へと消えて言った白髪の少女を見送ったマリーが、こちらを振り返りながらも、手にしている《イブの杖》に魔力を送り込んだのだろう。


《イブの杖》は紫色に輝き始めている。


その輝きこそが、開戦の合図だ。


宙に居るマリー、それから地上のアース、カイハーン、ヒュウガが、淡い白い光に包まれる。

《ノアの杖》による加護が付与されたようだ。


マリーは、口元に笑みを浮かべながら、《イブの杖》を掲げようとしていた。


させるかっ!!


私は、疾走から跳ねた。

両翼で叩いた。

思い切り。

大地を叩き、跳ねた。


"ザシュッ"

ライ……」


大地から跳ね上がった《アマテラス》の刃……銀光は、見事にマリーの胴体を切り裂いて後方へと抜けた。


「ナルっ!!アイリーンっ!!」

私はマリーに振り返りながら叫んだ。

ナルやアイリーンを見ているヒマは無い。

私の声が届けば、充分だ。

「避けてっ!!!!」


笑ったマリーの口が開いた。


雷帝らいていっ!」


ローズ=マリーが放った言葉を最後に、世界は白い輝きに包まれた。


空から、幾つもの光りが一斉に落ちる。


大地は唸る。

空気が轟音ごうおんに震える。



私はまばゆい光の中を……。

チリチリと背中を刺す空間の中を……。


ただひたすらに。

翔んだ。

滑空した。


目指したのはマリーの身体。



やがて、空間を焼いた白い光が収まっていく。


大地では、アイリーンがアースへと疾走していた。

雷は避けたのだろうか。

無事で良かった。


それから、私の視線は、すぐにナルを探した。


居た。

アイリーンから大分離れたところに。


青黒い巨体に体当たりでも、されたのだろうか?


カイハーンは天に吠え。

ナルは地を滑った跡の先で立ち上がり、笑っていた。



さて!

どうしようか?


私はマリーの背後にいた。

身体がぶつかるほどの、背後。


「…」

マリーは無言で、《イブの杖》で自身の背後を払いにきた。


だが、遅い!


私は、再び……いや、今度は縦に……。


"ザシュッ"


《アマテラス》の刃は、マリーの頭から股までを一気に両断した。



しかし、《ノアの杖》による加護はバッチリのようだ。

マリーは、無傷な自身の身体を一瞥したあと、笑いながら言う。

「やはりこの能力は素晴らしいですね」


「あはは……こりゃ、参ったね」

両翼を広げ、いつでも加速できる体勢で、私は答えた。



《イブの杖》が動き出した。

私は両翼で空気を叩く。

全力前進!

目指したのはマリーの身体。


"ムギュッ!"

ごくえ………」


マリーが魔法を中断する。



……やはり。

私は、やはりと頷き、しかしだからどうしたものかと考えていた……。


マリーの身体にギュッと抱き付いた姿のままで。

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