073話 衝突!総力戦!~壱
―― 暗雲は渦巻き。
風が踊る。
光が届かない大地は薄暗い。
山の斜面に突如として大きな運動場ほどの
草も生えていない不毛な大地。
そこで、私達は足を地に着けた。
疲れた訳ではない。
そこに、居たから。
不毛な大地の先に彼女たちが居たから。
ひとりは、背が高い女性。
褐色な肌に、筋肉質な身体。
獣の毛皮を上下に着こなし、頭上には巨大ハンマーを掲げている。
その巨大ハンマーの名は《サタン》
そう、私達は彼女を知っていた……。
……彼女の名はアース……土の巫女だ。
そして……。
その隣にいるのは、巨人族アースよりも体躯がデカい二足で立つ人型の化け物……いや、竜か。
頭には立派な角がある。
身体中を分厚く青黒い鱗が覆い、肘や膝など、所々に鋭い
バチンッと地を打ったのは、
全身から湯気らしきものを立ち上げながら肩で呼吸するその竜の名はカイハーン。
彼女は、三貴竜の復活を望んでいた竜の巫女……。
巨大な二人は仁王立ちで、私達を見つめていた。
おーい、遅いぞ!
と、仲間を待っていた雰囲気は皆無である。
どうみても、ここから先は通さない。そんな意志が二人の視線から感じられた。
「竜の巫女のほうは、解らないけど……アースは誰かに操られてる……?……以前と様子が違うよっ!」
アイリーンは、《アルテミス》を引きながら片目を瞑り、矢先を、アースに向けている。
「みんな復活してるっぽいやつ!?」
ナルが《赤い
ナル、私も見回したよ。
ここにも……居なかったね。
私は気を入れ直すように鼓舞した。
「みんな、気を付けて行きましょう!」
私は両翼をバサリと、大きく広げた。
そして、《アマテラス》を右手に歩みだす。
ゆっくりと。
《ノアの杖》を掲げながらヒュウガが、ゆっくりと歩み出した私達に視線を送りながらこう言った。
「安心して下さい。仲間は私が、絶対に護ります!」
ふふ。
仲間になると、すごく頼もしいわね。
絶対的なノアの加護で護ってくれるヒュウガ。
その圧倒的な攻撃力は、イマリとほぼ同等だったアイリーン。
そして、帰ってきた特攻娘ナル。
攻撃、防御、素早さ。
三拍子揃った私達は……強いわ。
ノアの加護を付与してくれるヒュウガに、礼を言おうと彼女に振り返った。
……。
……なに?
ヒュウガは、だらりと両手を下げていた。
その桃色の瞳は生気を失い、焦点は定まらない。
何とか立っているヒュウガの背中に、抱き付く形で、それは居た。
真っ白い肌に、白髪ショートの少女。
深紅の瞳と深紅の唇が強烈なインパクトとなって目を差す。
前の世界で見た、死神の鎌を持っていた少女だ。
その少女の深紅の唇は、ヒュウガの首筋にキスをしていた。
いや、キスではない。
唇から覗く牙は、たしかにヒュウガの首筋を噛み、刺している。
「……なに?」
ついさっき、辺りを見回したときには、誰も居なかった。
まるで、空間を移動したかのように現れた白髪の少女に驚きを隠せないばかりか、ヒュウガが噛まれている状況という情報過多に、私は言葉が上手く出せなかった。
ナルやアイリーンも、ヒュウガに振り返り、動きを止めた。
深紅の唇が開いた。
少し垂れたヒュウガの血を、舌でペロッと舐めとり少女は言う。
「これで、いい感じじゃろ!」
少女は笑った。
そして、ヒュウガと共に姿を消す。
「なっ!」「…うそ」
ナルとアイリーンが驚嘆する。
私は、まさかと、もう一度振り返った。
そう、アースとカイハーン側に。
「ナル!アイリーン!……前よ!!」
私は、今、目の前に広がる状況を、静かに受け入れた。
仁王立ちのアースとカイハーン。
その横に、ヒュウガと白髪の少女がいた。
白髪の少女はヒュウガの手を握っていたが、宙に浮き上がりながら、その手を離す。
ヒュウガは、自力で立っているが、しかし、その瞳には生気が無い。
白髪の少女が浮いた先には、黒のドレスを着たダークエルフがいた。
そのダークエルフは……マリーは笑っている。
そして、私達を見下ろしながら
こう言い放つ。
「攻撃、防御、素早さ、魔法。
四拍子揃った私達は……強いわ」
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