071話 4/8

「ちょっと!!……大丈……夫……」


ぼんやりと視界が戻って行く中を、ナルの声が近付いてくる。


「……って!?」

"ザッ!"


違和感に気付いたナルが腰を落として、足を開いた音。


まぁそうだろう。

この二人を見て驚かないハズがない。


そして。


嫌な予感に、まだえぬナルに、私は叫んでいた。

「待ってナルっ!今は仲間よっ!!」



―― "ザシュッ!"



視界が戻る……。


……間に合ったようだ。



「あははは……勘弁してよぉ!」

気の抜けた声はアイリーンだ。

その場に座り込んでいたアイリーンの頭スレスレを、《赤いかんざし》は通り過ぎ、リヴァイの身体を突き刺して、止まっていた。


「剣の巫女さん!待って下さいっ!」

それを横目にヒュウガが、立ち上がりながら静止を呼び掛ける。


立ち上がったヒュウガは、凛とナルを見据えたあと、眼を閉じ、頭を深々と……下げた。

「すみません!貴女あなたは納得しないかも知れませんが、話しだけでも聞いてくれませんか!?」


私は……。

力が抜けて、座り込むアイリーンと

凛とした姿勢で頭を下げたヒュウガ

そして、赤い着物を着た少女ナル


三人を見て、なぜか、笑ってしまった。

「あははは。ふふ、ふふふ、あははは」


意味は解らない。

でも可笑しくて。

可笑しくてっ!


「ナル!……私!大きくなったよ!」

赤い着物を着た少女ナルは、ついに、私と視線がぶつかった!



「……ええーーーーーーっっっ!!!」


ナルの赤い瞳孔が開いた。

それはもう、真ん丸に。


ナルは両手から《赤いかんざし》を手放してこちらを向いた。

今にも飛び掛かって来そうな勢いだ。


私は両翼をバサッと広げた。

だって……抱き締め難いでしょ。


「ショコラーーーっ!!」

「ナルーーーっ!!」

ナルが両手を広げて飛び付いてきた。

こんなの……避けれない速さだ。


痛いよ!痛いいたい。

痛いってば…………バカ。

私も負けじと抱き締め返す。


「ジョゴラァァ……ぅぅ……あいだがっだぁよぉぉぉ!!」

ふふ。

ナル、そんなに泣かないの!!


私までつられちゃうから……。


「ナル!無事で……よがっだぁぁ……」



私の涙腺は、……崩壊した。




―― パキッ、パチッ


釜戸の炭火にあぶられたリヴァイの肉を頬張る四人の巫女たち。


彼女達は、各々が今までの経緯を話した。


そして、未来を話し合った。




そうして、幾ばくかの時が過ぎた。


釜戸の、残り火が最期に見た景色。


それは

四人が仲良く、砂浜を歩んで行く

後ろ姿だった。

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