061話 協力者

"にゃぁ~、みゃぁ~…"



雲の欠片かけらひとつない青い空。


キラキラと宝石のように輝く青い海。


全身に当たる、心地よい風を感じながら


私は、そんな青い世界を翔んでいた。



"みゃぁ~、にゃぁ~…"



先ほどから、猫のような鳴き声を発し、

私達三人に並走して翔んでいるのは、うみねこだ。


うみねこが現れたということは、港が近い。


「もうすぐ着くわね」

私は純白の翼を広げ、二人に振り返った。


ヒュウガは、アイリーンの、風の力を受けて問題なく翔べるようになっている。

が、しかしまだ空を翔ぶ事に不慣れなようで、凛とした可愛い顔が強張っていた。


一方、アイリーンは…居ない…。

「待て待てぇ~あははは」

私は声が聴こえる方を、見上げた。

アイリーンは遥か上空で、うみねこと戯れている…。




―― 「私達は一時的な協力関係だ」


マリーが消えたあの後、私達三人は、各々の関係を、こう結論付けた。


かつては、命を賭けて戦った相手だ。

はい、そうですかと簡単に握手など出来ない。


イマリは、ヒュウガに殺された……。

ナルは、両腕を無くしていた……。


しかし、私達は

アイリーンを、殺した……。



うるさい、憎い、消えろ、殺したい……。


そんな憎悪が浮上しては、抑え込む…。


今、殺して何になる……?



おそらく、三人とも解っている。


今は、力を合わせるときなのだと…。


三貴竜を倒さなければ、生きる、死ぬ以前に……竜以外の種族は全滅してしまうのだと……。



現に、マリー相手にすら

アイリーンの力を借りた。

ヒュウガに護られた。


私一人では、何も出来ないのだ……。




三貴竜を倒すまでだ……


我々は、『仲間』では無い。


我々は『協力者』なのだ。


そう、自身に言い聞かせる。




―― そんな微妙な関係を維持したまま

私達三人は、白い砂浜が広がる、大和の海岸に到着したのだった。

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