058話 伝説と真実

―― 昔、むかし

三百年ほど、昔のお話しです。



現代に語り継がれている。

先の大戦、《 天上界v.s地上界 》


実はそんな大層な大戦では、ありません。

語り継がれていくうちに、変化したのでしょう。


実際は、地上界の覇権戦争でした…。

ソル率いる八人の戦士達

種族の垣根を越えた八人の戦士達が

三貴竜と争いました。


結果はどうでしょう……?


引き分け、でしょうか…?


三貴竜のうち、

空の、バハムート

海の、リヴァイアサン

この二竜は、討ち取りましたが

地の、ヤマタノオロチを、ついに討つことなく大戦は終わります。


ソル軍も、壊滅的被害でした。

魔の戦士である私と……

血の戦士だけが生き残り

ソルとほかの六人の戦士達は死にました。


死んだ彼女らは、英雄となり、

いつしか、神と崇められました。


そして、神となった英霊の声を聴ける者が《巫女》として、現代に存在しています。


……すみません。

話を三百年前に戻しましょう。


ヤマタノオロチ……ですね。

その《力》はあまりに強烈でした。


ソルは非情な決断を下しました。


ヤマタノオロチを討った先に、新しい世界を創造しようと集めていた……

特殊な力を持った、八つのオーブ


その内の一つ、血の戦士が持つ血のオーブを

代償だいしょう》に、使用しました。


代償だいしょう

オーブ一つを用いて、対象を岩のような姿にして封印することが出来る。

だが、その代償は使用者の命。さらに、その使用者に関係していた者たちにも、ランダムな代償が発現する究極の最終手段。



血の戦士が、決死の覚悟で血のオーブをヤマタノオロチの心臓部に送り込みます。

直後、ソルの命を代償として、ソルが、それを発動しました。


ソルは、光の珠となって消えました。

私は、魔力を全て失いました。

ふふ、ただの人…いえ、ただのダークエルフになりました。

剣の戦士だった天使族は、残った一族、全て妖精のような姿になりました。


ヤマタノオロチは、巨体が岩のようになり封印されます。


私達は、ヤマタノオロチを討つことが出来ませんでした。

また、新しい世界を創造するためのオーブも

ヤマタノオロチとともに封印されています。


三貴竜による地上界統治も、

私達が目指した新しい世界の創造も、

どちらも叶いませんでした。


引き分け、という結末でしょう……。


しかし、

ヤマタノオロチは復活するための

些細な抵抗を残していました。


血の戦士の体内に、自らの血を…。


オロチの血を残していたのです。


その血は、脈々と一族に、受け継がれていきました。


そして、最近です。


血の戦士の子孫

血の巫女、長崎ナルという少女の中で

オロチの血による、オロチの力の片鱗が

ついに、発現しました。


私は、魔力が思ったように戻らず……

どうしましょうと悩みました。


そんなときに、現れたのが

蝙蝠…いえ、ヴァンパイアの女です。


彼女は、ただただ、楽しんでいました。


三百年前の大戦時も、そして今も。


ヴァンパイアは、巫女たちに

七つのオーブを集めさせました。


聖杯に、七つのオーブを入れると

残り一つのオーブを求めて

世界の時空が歪みます。


そうやって

私達は、あちらの世界を破壊され

今の三百年前の世界へやって来ました。



……しかし

私が居たはずの三百年前の世界とも違う世界……パラレル的な、別の世界線へと

来ているような気がします。


……気にしないで下さい。

理解できないでしょう。



前の世界で、やらされていたこと

今の世界へ、飛んだこと


ここらへんは、なんとなく解って頂けたでしょうか……?



そして、問題です。

ここからは、私にも解りません。


オロチが復活しそうになった世界を壊し

ヴァンパイアは、七つのオーブを使用して

この世界へやってきました……。


蝙蝠女の目的は、さて何でしょう?

オロチの完全復活

オロチの再封印

オロチの討伐

オロチの討伐と新世界創造

それ以外の人智を越えた何か。



―― マリーによる独白が一息付いた。


あまりに理解できない話に

言葉が出ないでいた。


そんなヒュウガと私に

マリーは視線を、巡らせて言った。


「さて私達、ソル軍は、

どう行動しますか? 」



この期に及んで仲間のつもりだろうか…?

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