056話 天使
「おかわりぃ」
少女が発した元気な言葉とともに、栗毛色の可愛いらしいポニーテールが、朝日に照らされ、ユラリと跳ねる。
少女の母親は、すみませんという苦笑いの表情を浮かべ、私との会話を一旦止めて、少女が差し出した茶碗を受け取った。
私は優しく微笑んだ。
いつか、どこかで、見たことのある風景だった。
そう、幸せな風景だった。
私がこの街に来て二週間ほど経っている。
私が意識を取り戻したのは四日前だ。
この数日で私は
この場所と、
この世界と、
この私自身を……
受け入れなければならなかった。
私は母親に、今までの感謝を述べ、そして、今日この街を発つことを告げる。
母親は、残念そうにしながらも、こちらの心配をし、応援してくれた。
少女は、純粋な瞳に、涙を溜めて、ヤダヤダと駄々をこねた…。
―― 夕陽が海に沈むころ
私は今、少女の頭を撫でている。
母親も静かに、それを見ていた。
「……ありがとう」
泣き疲れ、眠っている少女に、別れの言葉を告げる。
私は静かに立ち上がって母親にもう一度、感謝を告げた。
私は今、崖の上にいる。
辺り一面は、雪、雪、雪。
そう、辺り一面、白銀の世界。
私は、優しい家族に世話になったこの街を、背にした。
そうそう、この街の名前ね。
この綺麗な石造りの街の名前!
名前はない、敢えて言うなら北の街、だってさ。
この時代から、名も無き
ふぅ……じゃあ少し翔んで
三百年前の世界ってやつを。
私の背で、大きな純白の翼が羽ばたく。
落ちてくる雪を、振り払うように、しばらく空を飛び回った。
何かを……ムシャクシャする心の中の……何かをスッキリさせたかったのかも知れない。
私は、街を目指して、夜空に消える。
あー、そうだね。
ここで私の自己紹介をしておこう。
銀髪ストレート、キュートに
この世界に、天使は私しかいないみたいだから、名前など無くても困らないのだが、……ナルに名付けられた《
……身長は162㎝
可愛い白いチャイナドレス姿だ。
年齢不詳――
私がいつから存在しているのか
それは、私自身も解らないわ…。
可憐な容姿なのだから、若いのは間違いないだろう。うん、間違いない。
そして、私が背負っている白銀の大剣が
《アマテラス》だ。
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