055話 堕天使
―― あれからどれくらい
刻が流れたのだろう……
闇の世界で、意識だけが現れたり消えたり…しながら意識を漂流させていた私に、何やら声が聴こえた……気がした。
「…おい!…こりゃ大変だ!」
「天から堕ちてきたのか」
「死んでる?」
「堕天使だ…」
―― また、刻は流れて……
闇の中で、また聴こえた声
「…お姉ちゃん…目ぇ醒ました?」
「まだよ…でも大丈夫」
「この人は天使様だもの…」
―― 神や天使……ふふ、実在するなら……助けてよ……ねぇ助けてよぉ……
闇の世界に私はひとり……
あれ?……なんか暖かい?
……
……ナル……イマリ
逢いたい……よ……
―― 刻がいくつ進んだのか解らない闇の世界に来て、初めて光が差した
……ん?…やっぱり暖かい?
最期に私が感じた感覚は、冷たい…
…冷たくない?
「お姉ちゃん…早く元気になりますように」
!!
私の右手に、少女が握りしめてくれている温かさが伝わった…!
っ…! 身震い…
身体中に情報が流れ込む
手先、足先まで血が、染み渡る
肉体が、身体がゆっくりと重みを伝えてくる
トクン…トクン…トクン…
私の……鼓動だ。
あ……暖かい、温かい
私は優しく、その小さな温かい手を握り返した。
「……え」
「お母さん…お母さぁん!!」
少女は走り去っていったようだ…
私はまた、闇に落ちた。
でも、今までとは違う
温かさがある闇に落ちた。
遠くで聴こえる声を聴きながら
私は、闇に落ちた。
「天使のお姉ちゃん!起きたよ!ねぇお母さん!」
「あらあら、本当?」
「うん!こうね優しく手をギュッてしたの!」
「毎日、お願いしてたからね…元気になってくれたら良いわね」
「うん!」
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