054話 …end

光の無い、暗いくらい世界で

私は"冷たさ"だけを感じていた。



―― ほんの少し刻は流れ…



無くなりそうな意識の中に

声が聴こえた。


かん高い少女の声が言った。

「今回"あやつ"は、出て来なかったようじゃの」


「ええ、もうすぐお逢いできるのを、ご存知なのでは無いでしょうか?」

ローズ=マリーの声だ。


「ふん、まぁ良いわ…」


「聖杯はここにある、早速さっそく七つのオーブを入れるのじゃ」

少女は、楽しそうに言った。


「……はい。…しかし、オーブは全てで八つなのでは……?」


「血のオーブは、"あやつ"の体内に入ったまま、ソルに封印されておる、従って、この世界には七つのオーブしか存在しておらん」


「本来、八つのオーブを聖杯に入れると願った世界がつくれる…そして七つのオーブを聖杯に入れた場合は……」


少女は含みを持たせて、続ける。

「足りぬ一つのオーブを求めて、世界は時空を飛ぶのじゃ」


「…やはり、三貴竜がいた時代へと…」



「この世界は終わりじゃ!」



遠くへ去っていく気配


"カランカランッ"



何か、音がした、と思った瞬間


視界は闇の中なのに目が回る感覚に襲われる。


上下左右が解らなくなる。


身体が伸びる……いや縮む?


何かに、吸い込まれる


意識ごと…………。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る