047話 冷めた刃
ザクッ…ザク……。
石造りの広場に出来た足跡は、雪を踏み固め歩みを
その先で、海を向いていた黒いブーツがゆっくりと、こちらに向きを変えた。
いつから、ここに居たのだろう…?
黒ずくめの少女…イマリは、綺麗な黒髪の上や、小さな肩の上…物騒な《
こちらを向いたイマリ、だがその黒瞳には感情が宿ってはいない。
「イマリ……大丈夫?」
ナルは、《アマテラス》を背に担いだまま両手を広げ、イマリに抱き付くように近付きながら声を掛けた。
イマリはゆっくりと視線を地面に落とし、足下の雪すら崩すことなく…静かに姿を消した。
私が驚愕に目を開いていた次の瞬間、足下の雪を撒き散らしながら、ナルも姿を消す。
"ガキィィン"
凍えた空気に響く、不快な金属音と共に、二人は姿を現す。
石造りの広場の
その上には、両手のカタルを振り下ろしたであろう無表情なイマリが居た。
二人の間では、《アマテラス》と《
そして
赤い瞳と黒い瞳がぶつかる…
それは、何を想い…何を想ったか…
下から赤いブーツが勢い良く跳ね上がった。
それは、イマリの腹部に命中したかに見えたが、聞こえるはずの打撃音は聞こえない。
イマリは、両手のカタルをグッと《アマテラス》に押し付け、その反動で後方へ飛びナルの蹴りを
足を蹴り上げつつ後転し、立ち上がったナルの視界は、恐らく真っ白に染まっていただろう。
ナルより僅かに早く着地したイマリは、足下の雪をナルに向かって蹴り上げていた。
そして、イマリ自身は地を這い円を描くように石造りの広場を移動している。
ナルは、視界いっぱいに舞い上がった雪を《アマテラス》の腹で薙ぎ払う。
「おぉおおお!」
ナルの叫びに、空気が押し潰される音が混じり、宙に舞っていた雪は一斉に、横へと流れを変えた。
振り抜かれた《アマテラス》の先に、海岸と綺麗な雪景色がナルの視界に映り込んだ。
そこにイマリは、居ない。
地を這い、音も無く宙に舞っていたイマリは、ナルの後方で、今まさにカタルを振り抜かんとしているところだった。
「ナルッ!!」
《アマテラス》を振り抜いたナルと
無表情にカタルを振り抜こうとするイマリ
私の叫びなど気にも止めず
雪はただ、しんしんと降り続いていた。
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