043話 光の巫女 ヒュウガ
ヒュウガは、白く輝く大きな杖を天へ掲げ
瞳を閉じた。
「私は教皇であり、光の巫女である…
私は神の子…、教徒達の光…」
ヒュウガは独白する。
それは、まるでヒュウガ自身に暗示を掛けているかのようだ。
白く輝く大きな杖が、胸に下ろされる。
ゆっくりと開いた瞳は、真っ直ぐナルを捉えた。
「私は教皇として、これ以上、教徒達が命を落とすような事態は、断じて、避けなければなりません」
後悔の念を含んだ声色だ。
「……」
ナルは無言だが、ヒュウガの瞳を真っ向から受け止めている。
引き締めた桜色の唇が、再び開いた。
「しかし私は光の巫女。神が望む未来の世界…光の神が最高神となる世界の実現まで、戦い抜き、生き残らなければなりません」
光の神は " 未来 " と " 最高神の座 " を望んだか。
「…ならば、やはり…存在する全ての
ヒュウガは白く輝く木製の杖 《ノアの杖》を横手に引いた。
ナルが呼応し、腰を落とす。
しかし右手は、片手剣。
左手は、大盾 《ガラハド》のままだ。
……いいのだろうか。
「…私は巫女の中では最弱です。安心して
ヒュウガは、意味不明なことを発し、《ノアの杖》を振りかぶり突進してきた。
《ノアの杖》は、打撃用武器らしい。
ナルもヒュウガへ、一直線に疾走した。
二人の距離が、刹那的に
振り下ろされた《ノアの杖》。
だが、遅い。
《ノアの杖》の下を、駆け抜けたナルは、ヒュウガの背後で止まる。
振り返りつつ、横に
"……スッ……"
「…へっ?…ええぇぇええっ!!」
片手剣の刃は、ヒュウガの首へ食らい付く前に《ノアの杖》に行く手を阻まれた。
片手剣の刃は、光を切るかのような無抵抗さで《ノアの杖》に飲み込まれ
にわかに信じがたい事が、目の前で起きてしまった。
ヒュウガは振り返りつつ、《ノアの杖》を水平に振るう。
「…わわわ!ちょっ…っとまって!」
ナルは、《ガラハド》で受けようとしたが、
《ガラハド》を見捨てたナルはバックステップ、ギリギリ《ノアの杖》を避けた。
"……スッ……"
そこに何も存在しないかの様に、《ノアの杖》は、《ガラハド》を通り過ぎる。
《ガラハド》は、《ノアの杖》が通り過ぎた形に孔が空いていた。
「ひぃぃ!」
目の前で、それを見たナルは悲鳴をあげる。
ヒュウガは止まらない。
ナルの頭上へ、《ノアの杖》を振り下ろした。
"……スッ……"
床が
「やばっ…なにこれ!」
ナルは
立ち上がりつつ、ナルは片手剣の
ヒュウガは、ゆっくりと顔の前に、《ノアの杖》を構えた。
"……スッ……"
片手剣は、
「…でしょうね」
ナルは、もはや呆れ顔だ。
「……ふぅ」
ナルは深く息を吐いた。
「神の加護を…」
ヒュウガは何やら
ナルが立ち上がっていた場所には、もう誰も居なかった。
ヒュウガには、ナルが消えた様に感じたことだろう。
ナルはヒュウガの背後で《アマテラス》をすでに、振り下ろしている。
ヒュウガは最期まで、ナルを見失っていた。
《アマテラス》の刃は、
それから、頭蓋を割り、脳を潰しながら進み、ヒュウガの凛々しくも可愛い顔面を、縦に切り裂き、首もとへと向かう。
首を難なく裂いた刃は、ヒュウガの豊満で柔らかい乳房を一つと、その中の心臓と肺を、斬り分けて横腹から抜けた。
勢い余った垂直斬りに《アマテラス》は、床を深々と斬り裂き停止した。
"…カランカランッ"
二つに割れた王冠が床に落ちる。
ナルは《アマテラス》を床から引き抜き、素早く後退した。
「…参ったね!」
ナルは、苦笑い。
振り返ったヒュウガは……無傷だった。
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