042話 教皇

―― 告解こっかいの間


「どこまで、あるんだろう~」

ナルが上を見ながら、声を上げる。


私達は祭壇の左手奥にあった部屋…

告解こっかいの間に立ち入った。


そこにあったのは階段幅二m、螺旋直径十mくらいの巨大な螺旋階段だ。


螺旋階段は教会の一番高い階層へと、繋がっているようで、私達はそれを、下から見上げていたのである。


下から見上げた螺旋階段、それはまるで、天へいざなう階段のようだった。



私はナルを上から下まで二度見にどみした。

そう!ファッションチェックだ。

「…ナル、本当にそれで行くの?」


「…カタルは、捨ててこうかな…」

ナルは螺旋階段を見て、その重装備に後悔したようだ。


右手に大剣 《アマテラス》

左手に大盾 《ガラハド》

腰には片手剣とかんざしの三本差しで

背中には、カタルを背負っていた。


……ナルは、静かにカタルを捨てた。



「よし!一気に駆け上がるよ~!」

ナルは螺旋階段を疾走した。


"ボガン……ボキッ……ドゴン……"


一周ごとに台座に設置してある、聖なんたら像たちが、《アマテラス》や《ガラハド》にぶつかり、無惨にも破壊されていく。


「あー、もう!」

ナルの右手は、《アマテラス》から、片手剣に代わった。


たま~に、ナルが何をしたいのか解らない。



―― いのりの間


枢機卿バロックは、教皇はいのりので忙しいと言っていた。


螺旋階段を、登った先にあった部屋は一つ。

いのりの間』


カメリア教 教皇が居るとしたら、ここしかない。


ナルは、大きな観音開きの扉を開いた。



そこは、天井全体がステンドグラスになっている部屋だった。

様々な色の光が射しているが、光は、あくまで優しく、部屋は質素にまとまっている。


そんな部屋の奥に、小さな赤い十字架に向かって膝を付き、聖書らしき書物を読み上げている少女がいた。


少女は、私たちを気にも止めずいのりを続けている。


私たちは、その光景をしばらく眺めていた。



少女のいのりの声が止まる。

聖書は閉じられ台の上へ優しく置かれた。


少女は床に置いていた杖を両手で持ち、ゆっくりと立ち上がり、こちらに振り返った。


少女の頭には、綺麗に輝く小さなクラウンが乗っていた。

髪は薄い桃色、ゆるくふんわりとウェーブした髪は腰辺りまで綺麗に流れている。

少女だと思っていたが二十歳はたちくらいだろうか。

意思の強さを秘めた瞳が子供っぽさを払拭していた。


彼女は私たちを見据え、頭を下げた。


「私は、カメリア教団の教皇…

宮崎日向みやざきヒュウガ》と申します」


透き通るような美しい声にも、覇気が宿っている。

教皇の名に恥じない、力のある声質だ。


ヒュウガは独り言のようにつぶやいた。

「やはり東部管轄 枢機卿ツバキも招集するべきでした、私の誤った判断がバロック、カレリアの命を奪いました…神よ、お許し下さい」


彼女は、白く輝く大きな杖を天に掲げた。

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