037話 枢機卿バロック

「……枢機卿すうききょう?」

ナルの頭の上にハテナマークがハッキリと見えた。


ナルに至極しごく、簡単に説明する。

「教皇に次ぐ聖職位よ!」


「二番目ってことね!」

ナルは納得したようだ。


まぁ間違いではないので、良しとしよう。


スノウスでの調査によると、カメリア教団に枢機卿は三人存在するらしい。


世界を、中央部、西部、東部と三区域に分け、その区域ごとに枢機卿が管轄かんかつしている。


……しかし、ここオリゴは西部区域に当たるはず、何故、中央部管轄 枢機卿が?


「さて!用件とは………」

枢機卿バロックは喋りながら祭壇を降り、純白の絨毯じゅうたんへと足を運んだ。


その何でも無い動作、一つひとつが美しく華になる。


純白の絨毯を挟んで、私たちは対峙した。


バロックはニヤリと笑って続けた。

「…どのような内容でしょうか!?……剣の巫女よ」


…こちらの情報は、やはり掴んでいるようだ。

ナルは、《アマテラス》に手を掛けながら応える。


「二番目に用は無いわっ!そうね~、教皇が巫女なのかどうかだけ…教えてくれない?」

ナルは、バロックが片手剣に手を掛けたのを、見逃さなかった。


ナルはわざと挑発したようだ…。



「教皇様のことは、教える訳にはいきません!そして私は、あなた方に大事な用があります!」

バロックは片手剣を鞘から抜き払う。


…先程から、バロックの身体全体が白く光って見えるのは、全身鎧のせいなのだろうか…?

気のせい…?


優しい顔でバロックは続けた。

「安心して下さい!…ラクト市全域の教徒達には、教会にしばらく立ち入らないよう通達してあります!思い切り……り合いましょうか!!」

巨大な盾を前面に掲げバロックは、純白の絨毯の上を滑るようにナルへと迫る。


それはまるで、巨大な盾が意思を持って体当たりしているかの様だった。


「話が早いわねっ!」

ナルは《アマテラス》を横手に構えた。


ナルは、迫る巨大な盾を《アマテラス》で思い切りぎ払った。


"ガキィィーーン!!"


大聖堂に、かん高い金属音が響く。


「っ!!」

ナルの顔に驚愕の表情が浮かぶ。


巨大な盾は、《アマテラス》の薙ぎ払いを完全に弾いた。


しかし驚くのは、そこではない。


巨大な盾は、《アマテラス》を弾き、なおかつ、一瞬足りとも突進速度が落ちなかったのだ。


それは、ナルの馬鹿力による《アマテラス》の攻撃が、完全無効化された瞬間でもあった。

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