030話 小さな分かれ道

花火大会の翌日、スノウスの街では、ある情報を元にした考察が飛び交っていた。


情報源は大陸の北西端にある小さな漁村から、魚を卸しにきた青年らしい。


その情報とは…

昨晩、その青年が大陸北部の海…北海で漁をしていたところ、真っ白い船体をした五隻の船が東に向かって航行こうこうするのを見た。


その五隻は全て、白地に赤いラインがクロスした旗を掲げており、更に真ん中の一隻のみ、かなり華美な船だったという。



―― カフェ《アプリコット》


これまで集めた情報と、カメリア教団からの接触及び、街中での噂。


これらを踏まえ、私達が次に取るべき行動について三人で作戦会議をした。


今日は真面目な服装の二人に、まずは例の噂について、まとめていく。


「花火大会中に見た謎の光、あれは船の灯りだったみたいね」


頷いたナルは旗に言及する。

「白地に赤いラインのクロスって…」


静かに聞いていたイマリ。


「……すぅ」

息を吸った。そして…


「ひとつ、花火大会中にスノウス海流を5隻もの船団が東に航行こうこう。規模的に西のオリゴを出港した船団で間違い無い」


「ふたつ、船団の旗は昨日見た法衣と合致する。よってカメリア教団である可能性が極めて高い」


「みっつ、カメリア教の船団は、なぜ何もないとされる大陸北海岸を東に航行こうこうしているのか、目的地はどこなのか、は謎のまま」


「よっつ、華美な船には教皇か枢機卿すうききょうまたはそれ以下の階級、いずれにしても上位階級が乗船していると予想される。従ってただの航行こうこうでは無いだろう」


「いつつ、以上のことから私達の選択は必然的に次の二つに限られる。オリゴへ行くか、または船団を追うか」


イマリは早口で言い終えた。


それは、まるで…


イマリが私を見て呟く

「私は、情報統合思ん~んん…」

ナルが、口をふさいだ。


ギリセーフだろう……。



オリゴか、船団か。


どちらにしろ、私達は突き進むしか

道は無いのかも知れない。

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