026話 剣の巫女 v.s 土の巫女 終

大地に突き立てた《アマテラス》から血にまみれたナルの細い左手が…離れた。


続いて、ナルは、その場にくずれ、こうべを垂れた。


やれやれといった表情を浮かべアースは、一歩また一歩と、ナルに近付いていく。


その一歩、一歩が、死へのカウントダウンであるかのように…。



【……我ノ…血ガ……足リヌ……】



「…お目覚めかいっ!?」

アースは、ナルに話しかけたが…


違うっ!!

この声…あの時の……最悪だ…。


また、ナルが、ナルで無くなってしまう…。


イマリ!早く来てっ!お願いっ!!


……恐いよ…悲しいよぉ……やだよぉ…。



【……我ノ…血ヲ……カエセ!…】



「……っ!?」

アースも、ようやく異変に気付いたようだが…もう遅い。


今から、ここは地獄になるのだから……。


そこにいた〔少女〕は

《アマテラス》を握り立ち上がった。


【オオオォアアアアアァ!!】


〔少女〕は雄叫びを上げ、アースに体当たりか、それに近い何かをしたようだ…。


何が起きたのか、速すぎて私では視認できない。


〔少女〕が消え

アースが吹き飛び

アースが元居た場所に〔少女〕が現れた。


それがコマ落としのように目の前で起きた。


それだけである。


擬刃ギバ乱刃ランバ!】


ふざけるな!ふざけるなよぉ!!


それはナルの…あの笑顔で…

テキトーにやってみたら出来たぁ

みたいな…アホな…ナルの技だ…。

あんたの技じゃないっ!


〔少女〕は《アマテラス》を左手一本で振り回した。


段違いに速度を増した飛翔斬撃が次々と、アースに放たれた。


アースの左腕が吹き飛んだ。


吹き飛んだ左腕が二つに斬れた。


アースの右足の先端が斬れたと思ったら

両足が付け根から斬れた。


アースの巨体が、小さな肉塊に

分解されていく。



【オオオオォ!】

〔少女〕は叫び、《アマテラス》をアースに投げ付けた。


それは、あっけなくアースの心臓を貫き胴体を、岩山に貼り付けた。



【アアアアァ!】

〔少女〕は止まらない。


ナルの赤いかんざし二本を結い上げた髪から抜いた。


長い黒髪がバサッと背中に広がった。


赤いかんざしを二刀流のように持ち

〔少女〕は、アースであった物の元へ翔んだ。


胴体から離れた頭部だろうか。


赤いかんざしで、それを更に斬り刻んでいた。


他にも、いろいろ…。



しばらくして

アースであった物が

薄茶色い光のたまとなって

天に昇り始めた。



【ォォオオォォ!】

〔少女〕は雄叫びを上げ

そして

私を…見た。


〔少女〕は、もう目の前に居た。


血がしたたる赤いかんざしを振りかぶり…


「…ヤメロ…これはっ…わたしの…ち…」

「……わたしの…からだ…」


ナルの声に戻り、気を失い倒れた。




―― 私は泣きながらナルを治癒していた。

隣にはイマリもいて

静かに寝息を立てている。



―― このときも私は、血にまみれた、この戦場を

後にする蝙蝠こうもりを見ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る