025話 剣の巫女 v.s 土の巫女 2

《サタン》は天にかかげられた。


陽光ようこうさえぎられ、ナルはかげに飲まれる。


「…楽しかったよ」

アースはナルを見下ろし悲しげにつぶやいた。


ナルは岩山を背に、下を向いている。


吐血が止まらないようだ…地が赤く染まっていた。


巨大な足が、大地を一歩踏みしめた。


うなりを上げて振り下ろされた《サタン》は下死点かしてんを超え、アッパースイングへと移り変わる。


ナルが顔を上げた…。


痛々しいほど、血に染められた顔は、迫る《サタン》を見つめていた…。


"ガキィィィィン"


アースは《サタン》を完全に振り抜いた。


打撃音とともに、ナルは後方…岩山を割り…

岩山を突き抜け…更に、地を滑った…。


ナルは…仰向けに倒れ…起き上がらない。


「…ナルッ!」

私は叫び、ナルの元へ向かおうとしたが暴風は、それを許さなかった。


ナルとアースの間に巻き上がった砂塵はすぐさま、暴風が消し去り目隠しの用も足さない…。


割れた岩山の中を

右腕を、だらりと下げ

左腕で《サタン》を担いだ

アースが、ゆっくりと進む。


それは、まるで処刑執行人…?

大きな死神…?

……絶望という名の何か。



擬刃ギバ十字クロス!!」


ナルは…アマテラスを地に突き立て立っていた!!


《アマテラス》が生んだ飛翔ひしょう斬撃ざんげきは十字を描き、アースへ撃ち込まれた。


「……っはは!」

取り上げられたオモチャが返ってきたかのような笑顔でアースは《サタン》を自身の前へ突き立てた。


十字の飛翔斬撃は、《サタン》に十字のキズを付けアースの両肩をわずかに、かすりパッと血飛沫を上げて、消えた。


アースは再び、《サタン》を担ぎ上げ歩みを進めようとしたが、足が止まる…。


血まみれのナルを観察するように眺め、そして、悲しげに話しかけた。


「…おいっ…なんだよっ終わりかよっ!!」


「……」


返事は無い。


ナルは…さきほどから微動だにせず…

《アマテラス》を地に突き立てたまま…

虚空を見つめ、立っていた…。



―― ナルには今、何も見えていないし

聴こえても、いないだろう…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る