022話 闇の巫女 v.s 風の巫女 3

アイリーンは、二mほど上空に上昇し、そこからかかと落としの要領で、左足をイマリの頭上に振り下ろした。


"ガシュシュガン"


イマリは《漆黒しっこくのカタル》を頭上でクロスし受け止める。


アイリーンは、そのまま、《漆黒しっこくのカタル》の上を歩くようにイマリの背後に回り込み、すかさず、左ストレートパンチを背中に叩き込んだ。


身体を素早く反転させつつ左パンチを右手 《漆黒しっこくのカタル》で、払ったイマリは反転させた勢いのまま左手 《漆黒しっこくのカタル》の刃をアイリーンの首筋へ送りこむ。


しかし、アイリーンの右拳みぎこぶしは、それを許さなかった。


下から突き上げられた右アッパーは、《漆黒しっこくのカタル》を叩き、上へと跳ね上げた。


アイリーンは、一歩、踏み込んだ。


アイリーンの右拳みぎこぶしはアッパーから

そのまま、ストレートパンチへ移行し、がら空きとなったイマリのボディへ突き進む。


イマリのすぐ下の空間を、アイリーンの右ストレートは打った。


イマリは高く跳ね、前転宙返りから、左足によるかかと落としを、アイリーンの頭上にお返しする。


アイリーンは上体を反らし、目の前を通る、二つのかかとを見送った。


二段目の右踵みぎかかとは読まれていたようだ。


アイリーンは素早さを優先させた軽いハイキックを宙にいるイマリに叩き込んだ。


二つのかかとに続き《漆黒しっこくのカタル》をも振り下ろそうとしていたイマリは、速いキックにやむ無く《漆黒しっこくのカタル》を防御に回す。


宙で《漆黒しっこくのカタル》ごと蹴られたイマリは横手へ、吹き飛ばされた。


ハイキックで、吹き飛ぶイマリを、すぐさま、追うアイリーンは、左、右へと身体を揺らしたあと、追うのをやめ右拳みぎこぶしを目の前で、払った。


"ガギンッ"


それはイマリから放たれた三つの《漆黒しっこく手裏剣しゅりけん》だった。


着地したイマリは、止まらず速い。


地を這い、アイリーンへ迫る。


アイリーンは手裏剣を払い完全にイマリを視界に捉えていた。


右足のローキックでイマリを迎え打った。


イマリは小さく跳ねた。


右足の先にある竜巻球たつまきだまだけを

避けるように。


イマリのすぐ下を通るアイリーンの右脚へ《漆黒しっこくのカタル》の刃が横に走った。


アイリーンの白い右 太腿フトモモに鮮やかな赤い線がスッと走り、その後、忘れていたかのように、血が舞った。


イマリは、まだ前へ。


左手 《漆黒しっこくのカタル》をアイリーンの腹部へ突きだした。


アイリーンは、太腿フトモモの傷を気に止めず繰り出した右ローキックから右膝みぎひざを曲げ、右脚を折り返した。


一度は通りすぎた右足は右踵みぎかかととなり再び、イマリを襲う。


変則的な足技にイマリは防御が遅れた。


突き出した左手 《漆黒しっこくのカタル》は

攻撃を諦め、身体の右側へ回したがイマリは右肩から血飛沫を上げながら再び、吹き飛ばされる。


地を滑り、転がり起きたイマリは横手へ滑るように移動した。


刹那せつな、イマリが起きた場所にアイリーンの両足が宙から降ってきた。



地を削った竜巻球たつまきだまはいつまでも、イマリの血肉を追い求め…。


イマリもまた、それを迎え打ち止まることはなかった……。



―― 闇の巫女と、風の巫女による攻防は

漆黒しっこくのカタル》と竜巻球たつまきだまがぶつかる不快音が

いつまでも連続することで

いつしか、小気味いい音にかわり

戦場に鳴り響いていた。

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