021話 闇の巫女 v.s 風の巫女 2

先に動いたのは、アイリーンだ。


宙を高速移動しつつ、高く掲げた右足をイマリの顔へ振り下ろした。


真空が金属をへし曲げるような、回転する何かが金属とぶつかり合うような…。


そんな音が響いた。


"ガシュシュガンッ!"


アイリーンの蹴りは《漆黒しっこくのカタル》により防がれたが、その打撃音が、両手両足に滞留する竜巻球たつまきだまの驚異さを教えてくれる。


両手両足に滞留する竜巻球たつまきだまは、紫電と真空すらも巻き込み高速回転しているため、生身で触れようものなら、即、骨と肉のミンチの出来上がりだ。


右足の振り下ろしを弾かれたアイリーンは、弾かれた勢いをそのまま、流れるように右足の中段回し蹴りへと移行した。


"ガガガシュン"


漆黒しっこくのカタル》をクロスさせ、それを防いだイマリだったが、数m程、地を滑る。


イマリの視界には、もうすでに跳ね上がるアイリーンの爪先つまさきが見えていたのだろうか。


サッカーのシュートの如く、下から振り抜いた爪先を、イマリは身体の軸を、僅かにずらしながら前進し、かわしていた。


かわしていて、尚、竜巻球たつまきだまが通過する際に、イマリの肩、頬に傷が入り、血が舞う。


至近距離となったイマリは肘打ちをアイリーンの鳩尾みぞおちに決める。


二人にが空いた。


イマリは、左腕のひじ打ちから、そのまま肘を伸ばし《漆黒しっこくのカタル》の刃をアイリーンの豊満な胸部へ送り込んだ。


"ガシュシュン"


竜巻球たつまきだまは刃を受け止めていた。


両手両足の竜巻球たつまきだまは、凶悪な武器だけでなく、防具も兼ねるらしい…。


「……厄介やっかい

何やら呟き、距離を取ったイマリ。


「近接戦、楽し~いっ!闇さん!まだまだ行きますよ~!」

戦場に似合わない高い声色を置き去りにアイリーンが突進してくる。

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