023話 闇の巫女 v.s 風の巫女 終

―― 二人の身体は、いつしか

赤黒く染まっていた。


それが、自分の血か、返り血なのか最早もはやわからないほどに。


アイリーンの蹴りをかわふところに入り込んだイマリは《漆黒しっこくのカタル》を

水平にいだ。


しかし、アイリーンの腹部を裂くことなく割って入った右手の竜巻球たつまきだまに阻止される。


"ガシュシュンッ"


互いが弾かれ距離が空く両者。


「…闇さぁん…私、そろそろシャワー浴びたぁい」

血がべったり付いた髪に触れながら アイリーンが甘えた声を出す。


「……」

血まみれのイマリは無反応に、ただアイリーンを見据えている。


「うん!やっぱり、終わりにしよっ!」

アイリーンの自問自答だったようだ。


彼女の中で、何かの結論が出たらしい。


アイリーンは、ゆっくりと前へ…

倒れた……?


"ボフォンッ"


アイリーンの両足先にあった竜巻球たつまきだまぜた。


刹那せつな、アイリーンが凄まじい速度で突進した。


両手を上げ、二つの竜巻球たつまきだまを頭上に掲げている。


猛烈な勢いごとイマリに叩き込む算段だ。


予備動作もなく発生した猛烈な突進に、避けることも、受けることも不可能かと思われた…。


「…スゥ」

イマリは息を飲み


そして、両手を下ろした。


二つの竜巻球たつまきだま

イマリの頭部へ

今、まさに振り降ろされた。


アイリーンが叫んだ。

「ぇぇええぃっ!!」


「おおおぉあああぁっ!!!」

イマリが…叫んだ!!


イマリは両手の

漆黒しっこくのカタル》を


思い切り振り上げた。


"ガギギシュガギシュシュ"


火花を散らし、ぶつかる

漆黒しっこくのカタル》と

竜巻球たつまきだま


火花を散らし、ぶつかる

イマリの黒い瞳と

アイリーンのダークグリーン



「あああぁうおおぉお!!」

更に、イマリが…叫んだ!!



"ブォフォンッ!!"

二人の瞳が見開いた。


二人の間で、二つの竜巻球たつまきだまが衝突エネルギーに耐えきれず、ついに、ぜた。


至近距離の爆発にアイリーンは空を見上げる形で

力無く宙を舞っていく…。


イマリは額から大量の血を飛沫しぶかせながらも、そこに留まっていた。


漆黒しっこくのカタル》を、すぐさま地面に突き刺し後方への吹き飛びを回避したのだろう。


二つの《漆黒しっこくのカタル》を地面から抜き払ったイマリはんだ。


力無く宙を舞うアイリーンの更に上に、イマリは現れた。


アイリーンは、空を見上げ微笑んでいた。


戦意を失ったか…。


イマリは、アイリーンを見下ろし《漆黒しっこくのカタル》を後方へ引いた。


「イマリッ!!」

私は叫んだ。


遥か上空から二つの巨大な矢が、イマリの頭と心臓を目掛けて猛烈な速度で落下していた。


二つの矢が

イマリを貫くのが先か。


漆黒しっこくのカタル》が

アイリーンを斬り刻むのが先か。


アイリーンは笑う。


勝ちを確信したのだろうか。



イマリは、呟いた。


「…旋刃センバ


水平に構えた

漆黒しっこくのカタル》ごと

イマリは身体を旋回させた。


それは、速く鋭い…。


二つの刃は、まず

後方の矢を二つ打ち払った。


そこから更に勢いを増す。


一つ目の刃は


まだ笑っているアイリーンの

尖った左耳をあっさり斬り落とし

こめかみへと斬り進んだ。


刃に左眼球が潰れ

血飛沫と体液と潰れた眼球が

スローモーションの如く宙に舞う。


刃は頭蓋を難なく破壊

柔らかい脳を上下に斬り分け

もう一つの眼球を潰しながら、頭部を抜け

最後に右耳を斬り落とした。


宙に舞う、脳髄と小脳それに髄液を

舞い散った金髪がキラキラとデコレートする。


二つ目の刃は


鼻と口だけになった頭部を

胴体から完全に斬り離した。


止まらない旋回。


それからも、イマリの旋回と

何かを斬り裂く音は、しばらく続いたが


私は見て居られなかった……。



辺り一帯を血の海にし

イマリは、着地した。

そして、アイリーンであった物に呟く。


「……矢の影が…地面に見えた…」



次第にアイリーンであった物が

薄緑色の光の珠となって

天に昇り始めた。



イマリは空を見上げていた。

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