019話 風の余裕、土の美学

擬刃ギバッ!!」


突如、表れた斬影型の飛翔斬撃が《アルテミス》による銀の閃光を二つに割った。


それをなし得たのはナルと《アマテラス》だ。


イマリの叫びを聴き、すぐさま飛び起きたナルは、左手で《アマテラス》を高速で振り下ろし冒頭のように叫んだ。


《アマテラス》が超高速で空間を通過したことで、《アマテラス》前方に圧縮空間ができ、それが解放される時に反作用で真空状態が形成、真空衝撃波となり《アマテラス》の斬影形をした飛翔斬撃を生み出していた。


「…はぁはぁ」

ナルは肩で呼吸しながらも何とか立っていた。


しかし、顔面蒼白、右手はダランと垂れて、血にまみれている。


右肩から右手にかけて、相当数の骨折があるだろう。


「……本当に…良かった…」

イマリが何か呟いたが、暴風で聞こえない。


イマリもかなり疲労しているようだ。


頬を多めの汗が伝っている…。



「楽しいねぇ!血を血で洗う闘い!!…だけど…まぁそろそろ、終わりにしようかい!?」

こちらも、右腕をダランと垂らしたアースが、爽やかな笑顔でイマリ、ナルに話しかける。


「弓矢を縦に切り裂くとか、聞いたことありません!何者なの?…あ、巫女か!」

アイリーンは《アルテミス》をクルクル回して自問自答している。


窮地は免れたと言っても、まだ戦況は相当不利だ。


右腕を破壊したはずのアースはダメージがあるのか、ないのかよく解らない。


アイリーンに至っては、ほとんどダメージを与えていない。


イマリが駆けた。


地を這う、黒い迅雷はアースに迫る。


アースは《サタン》を振りかぶり、黒い迅雷を叩き潰そうとしたが、黒い迅雷は進路を変え、代わりに《漆黒しっこく手裏剣しゅりけん》をアースの瞳にプレゼントした。


"キンッ"


難なく弾いたアースは、左肩を上げ、つまらなさそうなジェスチャーをしている。


イマリは、ナルの側に駆け寄り、呟いた。

「ナル…大丈夫!?」


「…はぁはぁ…左腕一本で、何とかなるでしょっ!?」

ナルはおどけて返事した。


イマリの口元に笑みが、こぼれた気がした…。


気のせいか…。


イマリはナルに近付き言った。

「…私が風を…」


「了解っ!私は土ね」

ナルもイマリに向き直り言った。


二人は

《アマテラス》と

漆黒しっこくのカタル》を

交差させる。


「「 競争ね 」」


"カキン"


赤と黒の疾風迅雷が

荒野を駆け出した。

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