016話 風の哀愁、土の覚悟

「皆が平等で平和な未来なら、今からでも…」

私は意味を成さない反論を呟いてしまう。


「……今からでは…もう、遅いんだよ…あんた妖精だろう!?なぜ人間側に味方する!?…妖精こそ絶滅しそうな種族の筆頭だろう?」

つち巫女みこ》は、私の立ち位置を問い詰めた。


私は…私は……。

「…」

私は……何なのだ…?


私が応えることが出来ないと踏み、《かぜ巫女みこ》が柔らかい笑みで説き伏せる。

「この世界では、人間と言う種が、気付けば悪でした。人間が利便性を追求する反面で、空気は濁り、水は汚れ、土は荒れていったのです。結果として、妖精、巨人、エルフ、ダークエルフ、竜人、ドワーフ等は総じて種の存続の危機に直面しました。ある一種族、人間だけを除いて…」


かぜ巫女みこ》の笑顔が消え、ナル、イマリを見据えた。


「…種の運命さだめ…環境の変化に対応できない種は絶滅するのみ…それは人間も同じ…あなた達は絶滅する原因を人間に押し付けているだけ」

イマリが反論した。


ナルが続く。

「よくわかんないけど…私達の神は現在を、あなた達の神は未来をってことは…やるしかないってことよね!?」


衝突を回避しようという考えがないのがナルだ。


つち巫女みこ》が豪快に笑った。


「あんた解るねぇ!!…今この場に、竜、剣、闇、風そして土」

つち巫女みこ》の視線が、それぞれの巫女を巡り、続けて言う。

「七つ中、五つのオーブが揃っている。この闘いは熱いよ!種族を賭けた闘いだ!」


イマリが姿勢を低くした事に反応し、《かぜ巫女みこ》が、矢先をイマリに向け、笑いながらこう言った。

「闇さーん、慌てないでください、動くと私の《アルテミス》が誤射しちゃうじゃない?」


「あっちが《かぜ巫女みこ》名はアイリーン」

つち巫女みこ》が《かぜ巫女みこ》から視線を戻しながら続けた。

「そして私は《つち巫女みこ》アース、自慢の《サタン》で叩き潰してあげるよっ!」


アースという《巨人族きょじんぞく》の女性は《サタン》と呼ばれた巨大ハンマーを片手で天に掲げた。


なんという怪力だろう。


ナルの馬鹿力を凌ぎそうだ。


「やるしかないわねっ!」

何故か楽しそうに《アマテラス》を構えたナル。



―― こうして四人の巫女による死闘は始まる。

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