014話 風の旋律、土の慟哭

立て続けに放たれる銀の閃光を、イマリとナルは、前進速度を落とすことなく、不規則に左右に振れながら避け、疾走していく。


暫くして、銀の閃光が止む。


「…あと、二百m」

イマリが呟き、更に加速する。


「ラストスパートォッ!」

ナルは、何故か笑顔で叫んだ。


純粋に競争を楽しんでいるかのようだ。


"ドゴゴゴゴォォォ!!"


突然の豪音は足元から鳴り響いた。


地面が次々に割れて、辺り一体の地面が隆起、陥没する。


「…障害物競争」

イマリは何やら呟き、隆起した地面上を、軽やかにジャンプしながら前進していった。


ナルは、地面の陥没に巻き込まれ、何やら叫びながら土砂に飲まれた。


私はナルの赤い着物の端を見つけ、生存確認する。

「ナル、大丈夫っ?」


土砂が、もぞもぞと動き

「…ぷはぁ!はぁはぁ」

ナルが顔を出した。


「今日の私は、砂運ないね…」

嘆くナルに笑い返したが、今はそれどころでは、なかった。


明らかな殺意を持った弓矢による攻撃や、大地を広範囲に破壊する力が、一体何なのか解らない事ばかり…。


私はナルの着物の端を握り、土砂から救い出した。


「イマリは先に行ったわ、私達も急ごうっ!」

私はナルを急かした。


ナルは着物をパンパンと叩き

「よぉし!…ふっかぁつ!」

ナルは最後に、自分の頬をパチンッと叩き気合いを入れ直したようだ。


「よしっ!ショコラ行くよー!ちゃんと捕まってて!」

私は再び、ナルの着物の背中に抱き付いた。


地面が隆起陥没したエリアを抜けた先に、イマリは居た。


漆黒しっこくのカタル》を構え、誰かと対峙しているようだ。


近づくに連れ、ハッキリと姿を捉え始めた。


イマリに向かって、左側には、緑色を基調とした革の服を身に纏った、薄い金髪の少女が、大きな弓の弦を引いている。


しかも、羽も無いのに2mほど、宙に浮いたまま、空中で停止していた。


イマリの右側にも、女性が居た。


こちらは、背が高く、腕や脚は筋肉が浮かび上がっている。


肌が褐色だ。


獣の革だろうか、茶色の毛皮を上下に着こなしているが、やはり、目が行くのはその頭上に掲げている巨大ハンマーだ。


二人とも、イマリを見据え何やら会話していたようだが、こちらに気付いたようだ。


視線がナルに移る。


ナルは視線を気にしながらも、イマリの側まで駆けていく。


「イマリ!これは…?」

私はイマリに問いかけた。


イマリは呟いた。



―― 「…一石二鳥」

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