009話 竜の巫女との血戦

竜の眼光は、手負いのイマリを捉えた。


竜は追撃すべく身を低く構える。


"ズブリッ"


その刃は、竜の鱗を裂き、肉を切り開きながら、柔らかい臓器を破壊、反対側の鱗まで裂いた。


「よそ見はダメよ」

それをなし得たのはナルの《アマテラス》だ。


竜の背中から腹部に抜けた《アマテラス》をナルは一気に引き抜く。


竜の前後に大量の血飛沫が吹き上げた。


「ガアアァオオ!!」

竜が雄叫びを上げる。


ナルはジャンプし《アマテラス》を横にいだ。


狙いは竜の首だ。


竜は振り向きながら右手を掲げ、受け止めた。


"ズブシュッ"


全快したナルの馬鹿力だ。


先程止められたとげごと切り裂き、刃は竜の豪腕の真ん中辺りで停止した。


ナルは《アマテラス》を引き抜き、回転しながら着地、そのまま竜の左脚へ刃を送り込む。


竜は振り向きながら竜尾をナルに叩き付けた。


竜の前方からは黒い疾風が、赤い尾を引きながら走った。



―― 《アマテラス》は竜の左脚を切り裂き、大腿骨に当たり止まった。


―― 竜尾はナルの右脚に直撃し、大腿骨が折れる鈍い音を奏でた。


―― 《漆黒しっこくのカタル》は竜の喉元を刺し貫くべく突き出されたが、貫いたのは竜の左手だ。



竜は頭上に右豪腕を掲げた。


右脚があり得ない方向を向いているナルに、叩き込むためだ。


ナルは竜の豪腕を見上げている。


"ドゴォォオン…"


闇に舞う粉塵。



―― 月明かりに照らされた《漆黒しっこくのカタル》は粉塵の中にいる竜を、どう仕留めるべきか刃を光らせていた。


傍らに、《アマテラス》を置いて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る