006話 竜の巫女との終戦

対峙から動き出したのは、二人同時だ。


カイハーンは、《雷電ライデン》のはしを握り、片方の矛先を高々とかかげた。


拐土サラウドォン」

カイハーンの叫びが雷光か。


矛先が雷のごとく、高速の銀流となりナルに落ちる。


ナルは、またもや前進だ。


地を走る赤い迅雷は、天から落ちて来た銀流を、すんでのところで避けた。


「おおぉぉっ!」

ナルは叫んだ。


前進速度が、更に上がる。


地を打った《雷電ライデン》は粉塵を巻き上げ、地面からバウンドした。


矛先はすぐさま、90度向きを変え、赤い迅雷をぎ払いに向かう。


結果、《雷電ライデン》はくうはらった。


ナルは、カイハーンの足元に現れ、斜めに斬り上げる。


しかし、カイハーンは読んでいたのか、高く跳ねていた。


そらから《雷電ライデン》の雨が降る。


ナルは前転で矛の雨を避け、カイハーンの後ろへ回り込む。


半月斬ハンゲツザン!」

それは、宙にいるカイハーンの叫びだった。


矛先が地に触れた刹那せつな、矛が円運動に変わり跳ね上がる。


まるで、地から出現した半月だ。


それは、前転していたナルの背中の肉を裂き、血を撒き散らしながら上昇していった。


雷電ライデン》の半円を追って、赤い血が半円状に宙に舞う。


「こぉぉのぉぉぉ!」

ナルは雄叫びを上げた。


背中をえぐられつつ、身体を反転させる。


ナルは後方に思い切り、水平斬りを繰り出した。



―― 半円を描いていた血が一斉に横へ流れ

そして、地に落ちた。


《アマテラス》を振り抜いたナル。


半月斬を繰り出し着地したカイハーン。



―― 時が止まる。


"ドスンッ"


二人から離れたところに、《雷電ライデン》が地に刺さる。


地は、《雷電ライデン》から流れる血を吸い、赤く染まり始めた。


雷電ライデン》の柄を、肘から先の、あるじを失った青白い左手が今も握り締めていた。


「…はぁはぁ」

カイハーンは左腕を抱え、苦痛に顔を歪める。


右足と左脇腹に深い斬り傷を負い、尾を半分と、左手も欠損した。


いまだに、倒れていないことは驚愕に値する。


「カイちゃん…もうやめよう…?」

ナルは悲しげに、カイハーンに提案した。


「…ごめんなさい」

泣いている。


大粒の涙を両目からポロポロとこぼしながら、カイハーンは謝った。

「ごめんなさい…私が未熟なばかりに…」


悔しさと哀しさが混ざった表情をしながらカイハーンは呟いた。


―― 「ごめんなさい…私は…あなた達を殺してしまう…」


「…え?」

聞き間違いか。


ナルはカイハーンに近付いていた足を止める。

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