005話 竜の巫女との熱戦

私は全身に力を込め、イマリの首に空いた

傷口に、そっと触れた。


触れた右手から

全身の力をイマリへ流入させる。


私の身体とイマリの首あたりがぼんやりと

白く輝きはじめ、傷口が徐々に塞がっていく。


私が唯一使える能力は治癒だ。


やはり傷が深い。


完治まで時間が掛かりそうだが、ナルの意図した猛攻が時間を稼いでくれているので、何とかなりそうだ。



―― 《雷電ライデン》の三連突きがナルの胸部を襲う。


"カン、キン、カシュッ!"


二撃目まで、《アマテラス》の腹で受け、三連目は角度を付け受け流しつつ、ナルが叫んだ。


「おりゃぁ!」


擦過音さっかおんを、鳴らしつつ強引に袈裟けさ斬りに移行した《アマテラス》の刃。


「くっ…!」

カイハーンは迫る刃を、しっかりと視界に納め、ギリギリのところで身体を回転させ回避した。


必要最小限の動きで無駄がない、その身のこなしに美しささえ、感じてしまう。


カイハーンはかわした回転を利用し、《雷電ライデン》を水平に回転させる。


両端の刃が、空気を切り裂く音を鳴らしながら、容赦なくナルへ襲い掛かった。


"ヒュッ…カシュッ…ブォン…"


下へ、上へ、避けながらも、次々襲い掛かる《雷電ライデン》の刃は次第に速度を増し、ナルをとらえ始める。


"カシュンッ!"


擦過音さっかおんを響かせ、何とか流した《雷電ライデン》の刃。


しかし、すぐさま反対側の刃が血肉を求め、空を切り裂きながら食らい付いてくる。


"ビシュッ!"


「…ちっ!」

ナルの左肩に赤い飛沫が舞う。


ナルの左肩をかすめ、《雷電ライデン》の刃は去って行ったが刃は二匹だ。


すぐさま、次の刃がナルに迫る。



―― 次の瞬間、ナルは前進した。


カイハーンの顔に驚愕の表情が浮かぶ。


赤い疾風は、台風の中心部へ迅雷となり走った。


今度は、二人の間に赤い飛沫が舞った。


飛沫が合図かのように、二人が吹き飛ばされ、距離が空く。


回転力と直進力が衝突し、行き先を失ったエネルギーが二人にぶつかり解放された。


赤い疾風迅雷、ナルの突きはカイハーンの左横腹を赤く染める。


「はぁはぁ…」


睨み合う二人。

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